「授かる」 
第24回(平成23年)大伴昌司賞受賞作

牧 圭一

埼玉県生まれ。千代田工科芸術専門学校卒。
シナリオ講座第20期基礎科・第21期研修課修了。


「授かる」シナリオ
【あらすじ】
 三雲有希(29)は夫の邦夫とともに五年に渡り、不妊治療を受けていた。そして四度の妊娠と四度の流産を経験し、有希は深く傷つき、邦男との関係も、義母である綾子との関係も上手くいっていなかった。
 そんなある日、邦男の出身大学でもある聖成医大病院で辻明という評判の培養士がいると聞き、顕微授精を受ける。治療は成功し、有希は妊娠する。ただそれは有希にとって新たな苦しみの始まりでもあった。
 流産の不安と闘う日々の中、病院側から信じがたい事実を告げられる。明のミスで他の夫婦の受精卵と取り違え、お腹の子は赤の他人の子供である可能性があるというのだ。病院側は中絶してもらいたいと考え、有希と邦男も事態が事態だけにやむを得ないと思っていた。
 一方、北野梓(41)は夫の宗介と四年の不妊治療を続けていた。しかし成果は全くなかった。だが今回は期待していた。聖成医大病院でゴッドハンドと呼ばれる培養士に顕微授精をしてもらったからであった。そして念願叶い、梓は妊娠する。喜びいっぱいの生活の中に突然、病院から受精卵を取り違えて妊娠させた可能性を告げられる。病院は中絶を暗に勧めるが梓は断固として拒否し、取り違えた相手との面会を強く要求する。病院はその要求を認めるしかなく、梓と有希は対面するが――。