【タイトル】 

「偽装の果て」

【作者】 

和泉 英智

【E−mail】 

capra21eichi@yahoo.co.jp

【シナリオ】

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《梗概》

 

産廃処分場。一人の男が首まで埋められている。男の名は今尾征司。産廃業界の業界紙「環境タイムス」の記者である。なぜここに埋められているのか、征司は記憶の糸を手繰り寄せる――。半年ほど前、征司は、取材に事寄せてある情報を集めていた。藤川産業は焼却灰を有償で引き取り、再生砂「グリーンサンド」として販売する事業を計画、そのため、単価の相場を知りたがっていた。征司の協力に感謝する藤川。だが、この再生装置自体、征司が藤川に奨めたもの。征司は記者であると同時に、メーカーに代わって装置を販売、紹介料を得る副業を行っていた。

環境タイムス社。経験十年のベテラン記者である征司は、新入社員の教育係でもあったが、ここ数年、面倒を見るものの、辞められていた。そこへ、新しい社員、佐々木哲也が入社した。哲也は器用ではないが、まっすぐな青年であり、好感を持つ。取材し、記事を書けるようにはなるが、営業ができない編集は社員にしないという編集長。征司は、哲也を昔の自分を見ているような気がし、藤川産業に連れて行き、広告を取らせる。正社員となった哲也は征司に感謝、慕うようになる。

ある日、藤川産業の再生砂グリーンサンドは、環境に有害であり、分析会社を買収しているとのファックスが環境タイムス社に送られる。これを調べるべきだという哲也。業界紙の記者が、業界のあら捜しをしてどうすると反対され、征司も、発信人もわからない一枚のファックスを根拠にする危険性を指摘し、哲也に冷静になれという。リサイクル偽装という、社会的問題を本気で究明しない会社や先輩たちに不信を募らせる哲也。

ある日、ファックスの発信人である若林幸一に出会い、哲也は、大学の先輩でテレビの仕事をする西川の助けを借り、究明に踏み込む。見過ごせなくなった征司は、業界の利益を守るため、哲也の行動を妨害するが、哲也は不正があることを公表、藤川産業の施設をストップさせてしまう。怒った藤川や征司は哲也を連れ去り、処分場に首まで埋めるという非道な仕打ちをする。しかし、征司も藤川を騙していた事実が発覚し、今度は自分が埋められてしまった。身も心もぼろぼろになった哲也は、征司の副業の証拠を会社につきつけると言い、征司との決別を果たす。かろうじて会社にとどまった征司は、かつての生気はなく、自分の行為を省み、良心の呵責に苛まれていた。