【タイトル】 

「JOB HUNTING」

【作者】 

森 文博(もり ふみひろ)

【E−mail】 

f-mori@mvg.biglobe.ne.jp

【シナリオ】

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《梗概》

 エリート銀行員の小嶺達也(四十九歳)は、突然、建設会社への出向を命じられ、戸惑う。
 密かに調査した結果、これは業務本部長の小田島が焦げ付いた融資の責任を自分になすりつけようとしているものだと気づく。小田島は、以前赤坂支店の支店長で、悪徳不動産会社に回収の見込みがない融資を続けていた。それを当時次長だった小嶺が非難したために、二人は犬猿の仲になっていた。
 小嶺は、小田島の汚いやり方に腹を立て、出向の話を断り、退社を決意する。以前、アメリカの銀行からヘッドハンティングの話があったのをアテにしていたのだが、その銀行に行ってみると、もうイスは埋まっていると告げられ、路頭に迷ってしまう。
 小嶺は、息子の春彦(二十歳)と高級マンションに住んでいた。妻の幸枝(四十八歳)は、主婦向けの雑誌の編集長だが、身勝手な小嶺に愛想を尽かし、同じマンションの隣の部屋に別居中である。そのため、家事全般は息子の仕事となっていた。
 小嶺は、息子が大学を中退し、テレビゲームの製作を学ぶ専門学校に入ったのが大いに不満だった。東大卒のエリート銀行員の小嶺から見ると、毎日、ゲームと取り組んでいる息子は落ちこぼれ以外の何ものでもない。「男の価値は収入で決まる」というのが小嶺の口癖だった。
 ところが、バカだと思っていた息子の春彦が、大手のゲーム制作会社に三千五百万円の高給で雇われる事になった。無職になり、息子と立場が逆転してしまった小嶺は、しかたなく家事をやるハメになる。忙しく働いている息子に邪険に扱われて初めて、小嶺はいかに自分が傲慢な人間だったかに気付く。
 小峰は競輪場で知り合った便利屋の手伝いを始めるが、わがままな客とトラブルを起こして警察沙汰になってしまう。息子に説教された小嶺は、自分も仕事がしたかったのだと答える。
 小嶺は嫌っていたテレビゲームを試しにやってみて、その魅力に取り付かれる。息子の才能を高く評価した小嶺は、会社で仕事に行き詰っていた春彦に「独立してゲームの会社を作ろう」と持ち掛ける。最初は気が乗らなかった春彦もまだ働きたいという小嶺の気持ちを察し、提案を受け入れる。 
 ゲームの会社を興し、社長の小嶺と息子たち社員が寝る間も惜しんで開発を続けた結果、何とかゲームは完成した。そのゲームソフトは人気を呼び、予定の八十万本を売り切り、成功を勝ち取る。 
 銀行では、小田島が専務に就任し、株主総会で承認を受けようとしていた。株主の一人として、小嶺は株主総会に乗り込み、小田島の過去の悪行を証拠の資料と共に暴露し、辞任に追い込む。しかし、銀行の裏の事情を知り小嶺の気持ちが晴れることはなかった。
 小嶺は、妻の幸枝に戻ってきてくれないかと頼む。つらい失業経験によって、小嶺は思いやりのある父親に変わっていた。