シナリオ講座      一般社団法人シナリオ作家協会


     
   大石三知子 (シナリオ作家 )

東京都生まれ。
大学卒業後、OL生活を経て
2005年東京藝術大学大学院映像研究科入学。
田中陽造氏に師事。07年同校卒業。
2008年9月、映画『東南角部屋二階の女』で脚本デビュー。


                            


2009年4月13日(月曜日)

球春である。
先週、2009年版のプロ野球選手名鑑をようやく購入。
プロ野球選手の顔写真と背番号、身長体重、経歴など諸々書いてあるあれである。
今年はシーズン開幕直前にワールドベースボールクラシックが盛り上がったせいか、書店に並ぶ選手名鑑も数年前より種類が豊富になっている、ような気がする。

毎年買うのは日刊スポーツグラフ社刊の文庫サイズ380円である。これを選ぶ理由は手頃なサイズとページ数、見慣れたフォーマットでそこそこの情報量ということなのだが、このところ少々満たされないものを感じるのは、趣味、家族の名前(独身の方は理想のタイプ)、愛車、の欄が無くなったこと。個人情報が何かと厳しい昨今、やむを得ない事情もあるのだろうが。しかしながら、これらは週刊ベースボール(週べ、ですね)の2月下旬に出る増刊号450円が満たしてくれるので、そちらも購入することにしている。

文庫サイズだけでも数種類あったので、一冊ずつ、手にとってみる…と、案外その企画意図が明確なのに驚かされた。

T社は過去5年の年棒の推移を掲載、確かに前年からのプラスマイナスの記載は他にもあったが、5年間とは。長きにわたった視点にあっぱれである。

この文庫サイズ版、概ね350円〜380円だったと記憶するのだが、C社はナント200円と価格破壊に打って出ている。が、しかし、文字は大きく情報もそれなりで、「あー選手名鑑ウチに置いてきちゃったけど、あの背番号59って一体誰だっけ」と、一日気になり仕事が手につかない人が出先の書店で出くわして「ま、200円だし」、と購入するには丁度良いかも。

そして、この名鑑ウォッチング最大の収穫はM社であった。理想のタイプ、などというヤワなものではなく、『既婚・独身』との表記。黒か白か、天国か地獄か、all ornothing、ときたもんだ。「わ、○○選手、独身だ、理想のタイプは家庭的な人…それって私?」とあらぬ射程圏内チェックをしていた『理想のタイプ』欄に替わって、この○×判定方式は、例えばですよ、旅先のホテルで、とあるチームの遠征と合流、声掛けられちゃったけど、あの人独身?というような時にいち早くチェック、というなんとも合理的なものではあるまいか。



2009年4月14日(火曜日)

昨日はリレー日記初日だった。日記をメールで送信するとこのページに自動的にアップされると聞いて、ホイホイと書いていざスイッチON!の気分でクリック。待つことしばらく…さてさて…とページを開いてあらびっくり。すきっ歯のごとく、一行書いては数行空いて、なんだか偉そうに幅きかせてしまった。どうやら改行すると一行あいてしまうみたい。年賀状ソフトで、毎度のことだし、と試しもせずに印刷して、とんでもない宛名レイアウトが飛び出し白紙の賀状を2、3枚、無駄にしてしまったというような。今日はつめつめで書いてみよう。

火曜日はごみの日である。昨年から、ごみ収集の分別とか回収日が大幅に変わり、かなり細かい分別になった。昨年の暮れ『ごみ・資源の収集カレンダー』というのが届いた。独り暮らしだった頃、いい加減なごみ分別で捨てたところ、数日後…燃えないごみだけ選り分けられて、透明なビニールに入って戻ってきたことがある。これってかなりショックな出来事。例えば2週間使い捨てのコンタクトレンズもちゃんと拾われてこの袋に入っていたし。以来、ごみとは誠実につきあいたいと思っていた。『ごみ・資源の収集カレンダー』とだって仲良くね、と思っていたのだが、いやはやこれが中々。

一番の難関は『プラスチック製容器包装』というつわもので、『プラ・マーク』が目印というのだが、プラ・マークがあっても汚れの取れないマヨネーズとかチューブわさびの容器は可燃ごみ。CDケースは「プラスチックだろお前は」と言いたいところをぐっと抑えて可燃ごみ。この他、ホカロンは不燃ごみ、乾燥剤は不燃ごみ、ビデオテープは可燃ごみ、という具合で「私が世界の常識」などと思っていたら生きていけない。

「ごみ捨ててさっぱり」という感触はもう味わえないのね、と感じ入っていたある日。大型家電店の閉店セールで卓上シュレッダーを購入した。葉書サイズ用ではあるものの、いらないDMやらラベルやら、捨てたいあれこれ、忘れたい諸々をバリバリ投入。シュレッダー君はそれらを文句も言わず、空腹を満たすかのようにバリバリ吸い込み、消化する。ごみ捨てたい欲を満たしてくれるありがたい一品として部屋の片隅に鎮座ましましている。



2009年4月15日(水曜日)

マグボトルを買った。小型の水筒、ですね。母のところへ行った帰りにスーパーの家庭用品売り場でお手頃な一品を発見したのだ。以前から外に出掛けるたびペットボトルの飲み物を、買う・残る・持ち帰る・捨てる、というパターンは「エコでない」と感じていた。そこでこのところしばらく、そういったもの売り場を通りがかると物色していたのだ。所望する水筒の条件は、カバンに入る大きさで(そんなに大きくなくて)、重くない、内側が洗い易い広口タイプ、フタはひねって閉めるタイプが安心でいいかも、といったことだった。

探し始めると結構種類は多いことが判明。先にあげた条件四項目は満たしているものもある。けれども決めかねたのは、そうそうこれも、と思う条件が1つ加わった為だった。追加されたのは、飲み口ってこっちよりあっち、という飲み口に関する1項目である。広口タイプには、大きく分けて、本体とフタ型と、本体とフタの間に飲み口ある型(以下、飲み口ある型)、のふたつがあるのだ。本体とフタ型は、本体の上部のネジネジらせんの辺りに口をつけて飲むことになる。これが案外素っ気ない。
もっとかまって欲しい感じがする。飲み口ある型は、飲み口というだけあって飲みやすい口当たりを意識した構造になっているのだ。じゃあ、飲み口ある型買えばいいじゃん、と言われそうだが、今まで出会った飲み口ある型は、本体が立派な保温保冷機能を兼ね備えており、持ったところ重く感じたのだった。保温かあ。あんまりいつまでも熱くてもねえ。出掛けた先でさあ飲もう、フタ開けた・口つける・傾けた、あっちっち、となりそうだし。保温保冷には目をつぶることにした。的を絞って、さてさて飲み口ある型で軽量なもんはないものか?と、密かに出くわす機会を狙っていたのだ。そして今日、めでたくこの一品にめぐり合ったのだ。しかもこれ798円と、今まで出会って、これにしちゃうか、と迷ってきた品々の中で一番お安い。そんなこんなでさっそく購入。ウチに帰って箱を開けるとマグボトルと共に8ページにわたる取扱説明書が。しばし新しい品を手に取説の無い水筒を思い出していた。小学生の頃、遠足のたび母がほうじ茶を入れてくれた、アルミの水筒の日向っぽい味が何だか恋しい。



2009年4月16日(木曜日)


ししとう油揚げ煮を作った。ししとうが冷蔵庫にあったので晩のおかずはこれに決定。暖かくなると食べたくなるウチの定番おかずである。

材料はししとう・1パック、油揚げ・3枚。調味料は酒・大匙1、みりん・大匙1、醤油・大匙2.5、鰹節・少々。それにごま油・少々、水150CC。さて、作り方である。ししとうはヘタの上で切る。油揚げは六等分(四角いのが6個、ですね)に切っておく。準備はこれだけでOK。いざ、鍋(フタのある片手鍋が良い)を火にかける。ごま油を少々たらして、ししとうを入れる。シュッとした後しばらく静かだが、やがてピチピチ文句を言い出したら適当に混ぜつつフタをする。臭くはないが、臭い物にフタをする、の感覚だ。フタの下でピチピチ文句がやがてポンポンとはじけてくる。時々様子を見る。この時、間悪くポンっとはじけて油が飛ぶことがあるので要注意。フタを盾に構えてそっとのぞくと良いかも。ししとうのまわりに程よく焦げ目がついたところで水・150CCを投入。ひと息にジュワっと入れよう。鍋の中に静寂が訪れる瞬間である。作る側もここでホッと小休止、今度は油揚げを入れる。油揚げを時々つついてひたひたするようにし、鍋がブツブツ言いはじめたら調味料の出番だ。酒、みりん、醤油、を入れ、しばし煮る。何分か測ったことがないのだが、キツネが醤油に染まったら、という気分で火を止める。鰹節をふりかけて出来上がり。
ちなみにこれ、温かくても良し冷めても良し。残ったら冷蔵庫で保存すれば翌日でもOKだ。

簡単なわりに、食べる楽しさがあるのがこのおかず。ししとうは時々、辛さの大当たりがあるからだ。「わっ、から〜」とヒリヒリの顔。「水?!」と火事場の形相でこちらが立ち上がった瞬間、「うっそー」と抜かす狼少年のような夫。わかっちゃいるんだけど、こいつに毎度だまされる『エア辛い』の夕げ。夏が少し近づいた。



2009年4月17日(金曜日)

今夜のおやつはカステラ牛乳である。この4、5日冷蔵庫にラップに包んだ二切れのカステラがある。夫の実家が長崎なので時々カステラが舞い込んでくるのだ。うちの賞味期限はどちらかというと野獣派で数字より嗅覚、記録より思い込みのタイプ。だから箱から出された今となっては彼らの賞味期限は「食べられる限り」なんだけど、冷蔵庫の広さの都合もあって、そろそろかなと思っているのだ。そう思いつつ昨日は買い物帰りにドーナツ買っちゃったし、一昨日は戴きものの芋きんが、といった具合にカステラの出番は延ばし延ばしになっていたのだ。そんな訳でこれを書いている今、そろそろかな、と思っている次第。

さて、食べ方であるが、超簡単コースのそのまま食べる、手間ひまかけるコースのフレンチトースト風、その中間に位置するカステラ牛乳がある。カステラフレンチは夫がどこかで聞いてきたのをうち風に作ってるんですが。作り方は、カステラを牛乳と玉子をといたものに10分くらい浸した後、バターを溶かしたフライパンで焼いて出来上がり。表面はこんがりカリカリで中がしっとりプリン状になり、簡単なわりに美味。あーでもフライパン洗ったりするのも面倒、超簡単コースで冷やメシならぬ冷やカステラってのもいいか。と、さっきまで迷っていた。でもでも、やっぱりカステラ牛乳にしちゃおうと思っている今。カステラを深めの皿に入れて牛乳をすっと落としてひたひたに。それだけなんですけど、牛乳がしみ込む瞬間はワクワクする。スプーンで牛乳に染まっちゃいました、という感じのカステラをすくう幸せ。ちなみに『牛乳カステラ』は牛乳を入れた器にそっとカステラを置いて埋没を楽しむタイプで、カステラに牛乳を落とす『カステラ牛乳』は似てるけど趣は少し異なると私は思っている。



2009年4月18日(土曜日)


これまで夕食後に書いていたのだが、今日は午後打ち合わせ、夜は飲み会ということで、お昼の前に日記タイムだ。さて、何を書こう、と机に向かう。鳥が鳴いている。
机の横の窓外は、大家さんの庭である。鳥が遊びに来る。春になって虫が増えたのか鳥の声もかまびすしい。そういえば去年聞いた鶯の声を今年は聞かなかった。桜の蕾が膨らんだ3月半ば頃だったか。夫と近所を歩いていた時、「ホケ…ホケホケ」という鶯もどきの声を聞いた。「ひなが鳴く稽古してんじゃない?」などといい加減なことを言って喜んでいたら、枝から飛び立ったのはメジロだった。この辺で鶯が定宿にしていた木がなくなったのかもしれない。生まれも育ちも東京の私はどれが何の声なのか悲しいほど知らない。以前に子供オーケストラのオーディションの話を聞いたことがある。面接で「得意なことは?」と聞いたら「近所の犬の鳴き声を聞き分けられます」と答えた子がいたそうな。さすが音楽を志す子だけある。が、しかし鳥の声。
知りすぎて何を言いたいのか分かったら、ピーチクパーチク。結構うるさいんだろうなと思う。BGM程度が机の横の庭には程よいのかも。と、こんなことを書いていたらもう昼になった。正午は一瞬静かになる。それから飛行機が飛んでいく。



2009年4月19日(日曜日)

田中陽造先生に会った。昨晩は弟子数名で先生の御尊顔を拝した。平たく言えば飲み会なのだが、陽造先生にお会いするのは貴重な機会だ。古希の誕生日のお祝いにとシャンパンとケーキを用意したら「君たち、俺をそんなに年寄りにしたい?」と笑って怒られた。誕生日は5月、確かにやや早まった感はある。お話は新作『桜桃とたんぽぽ』に始まり、仕事のこと、映画のこと、夜も更け子供の頃の話へと続いた。陽造先生の語り口は圧倒的に聞いている者をひきつける。しーんとしばらく黙って飲んでおられたかと思うと、「ある店に女が居てさ」と始まる。いきなり始まるから「これってホントの話、それとも」と、こちらも引き込まれるうちに、次から次へと物語りはつむがれる。何とも楽しく幸せな一夜だった。


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