・10:30 実作指導C 

・12:10〜14:00 懇親パーティー


執筆 及沢七木 (夏の公開講座受講生)

夏の公開講座・最終日は、前日に引き続き、各ゼミでの実作指導が行われました。井上登紀子先生のゼミでは、構成やセリフについて細かい指導が行われました。

井上先生はいつも構成を三幕で考えるのだそうで、オーソドックスなパターンを教えていただきました。

その作品で描きたいテーマを設定し、主人公の欲求を明らかにすること、そして、最初の1幕目で、主人公の状況説明をしてセットアップします。

 

【When】・・・・・・いつ

【Where】・・・・・どこで

【Who】・・・・・・・だれが

【What】・・・・・・なにを

【Why】・・・・・・・なぜ

【How】・・・・・・・どのように

 

を明らかにするのです。

主人公の欲求と葛藤が明らかになったら、2幕目ではそれをさらに複雑化していき、クライマックスに向けて、積み上げていきます。3幕目で、それらを解決するクライマックスを用意するのです。三幕構成の基本を応用すればいろいろな作品が作れそうです。

 

井上先生からは作劇法の他にも厳しい言葉をいただきました。

「プロになるためには、とにかく書くことです。書いていない人に、道はありません」

「プロになったら、一日で30分ものを書き上げなければいけないことも多々あります。そういう仕事が来ても怖れないですむだけの練習を積んでおいてください」

 

ここで惜しくも講義終了時間となりました。

 

3日間すべての講義が終わり、夏の公開講座2009の大フィナーレとなる懇親会が幕を開けます。日活撮影所内の松喜食堂には、講義を終えたばかりの全受講生が集まっています。各ゼミの先生・井上登紀子先生、北川哲史先生、久保田圭司先生、中野顕彰先生、森下直先生も顔を揃えました。

そして、特別ゲストとして、

シナリオ通信講座学長・小山内美江子先生、シナリオ通信講座委員会委員長・桂千穂先生、シナリオ通信講座委員・山田耕大先生、

シナリオ通信講座添削講師・岡芳郎先生、

シナリオ通信講座委員添削講師・高田純先生、シナリオ講座学長・加藤正人先生、

シナリオ作家協会会長・柏原寛司先生

が参加されました。

懇親会会場のテーブルは、よく冷えたウーロン茶やジュース、飲み頃のビール各種、厳選食材のオードブル、豪勢で厚みのある肉料理、新鮮な魚介類、揚げたてのフライドポテト、具沢山のサンドイッチ、夏野菜のサラダ、瑞々しいフルーツ盛り合わせなどが並んでいます。

 

ここで、シナリオ講座事務局から厚意がありました。各ゼミのシナリオが、ゼミの垣根を越えて希望者に配布されたのです。

また、小山内美江子先生は、ご自身が所蔵されていた月刊「シナリオ」誌バックナンバー、「News week」誌バックナンバーを、私たちに譲ってくれました。

 

そうして懇親会が、北川先生の巧みな進行でスタートします。先生方それぞれが我々に熱いエールを送り、「乾杯!」の掛け声で歓談の時間になりました。

 

この講座の先生は、高度な質問から今さら聞き難い初歩的な質問まで、全力で答えてくれます。「こんな質問をしたら、怒られるだろうか」という心配は無用です。シナリオ講座の魅力は、どんな質問をしても恥ずかしいという空気にならない所です。

自分が壁と思っていることも、第三者には解決の糸口が見えることがあります。まして講座の先生は、デビュー前の人ともデビュー後の人とも、多様な人たちと接していらっしゃいます。ここで先生に疑問点をぶつけたおかげで、壁を突き破った人もいました。もし、シナリオに悩む時間が3日間あるなら、この先生たちと少しでも会話をしてほしいです。 

そして、夏の公開講座をはじめ、基礎科、研修科、通信講座、創作論講義、秋のシナリオ合宿など、どのコースでも複数の先生から知恵を得られます。複数の脚本家と接している業界人は数多くいますが、複数の脚本家の作劇術を把握している人の方が、応用の幅が広くなります。短期間で、多くの役に立つ勉強ができるのがシナリオ講座だと思います。

 

さて、盛況な懇親会の中、各ゼミの先生のスピーチがありました。以下は、スピーチ内の実践的アドバイスです。

 

◆シナリオライターに必要なのは、自分の品質管理。自作のアラは、他人にはその10倍のアラに見える。

 

◆シナリオを書き始めたら、必ずエンドマークまで書き切ること。

 

◆セリフは声に出して読み、演じてみるといい。

 

◆毎日必ずシナリオを書くこと。1日1行でもいい。

 

参加者の皆さんは、こうした話を聞く度に 新しいアイディアを発想しているようです。眼の前にパソコンや原稿用紙があれば、すぐにでもシナリオを書き出しそうな勢いです。逆に、シナリオを書いていないと飢餓感を感じる人たちなのかもしれません。本当に熱心な人ばかりで、提出シナリオのために遠方まで取材に行く人や、ある歴史モノの作品を書いた人は、どんな意見にも応えられるよう大量の資料を持ち込んで授業に臨んでいました。

 

こうした場にいると、先生同士の会話にも遭遇出来ます。脚本家が何人も集まると、閃きと閃きが重なり、今までに聞いたこともない展開の会話が生まれます。この3日間、日活撮影所で学んだのは、映画やTVドラマが作られるのに、本当に多くの人が携わっているということです。講座の先生たちが、知恵と知恵、感性と感性を掛け合わせて、とてつもなく面白いお話を生み出しています。人を惹きつけるシナリオは、人と人との交流から生まれていくのかもしれません。

 

交流と云えば、参加者の中から「シナリオ講座事務局の電話の対応が、とても感じが良かったので参加を決めました」との声がありました。夏の公開講座2009のキーワードは、“コミュニケーションしながら学ぶ”ことだったのではないでしょうか。

 

やがて懇親会もお開きの時間となります。参加者も先生もシナリオ談義が尽きることなく、このまま2次会を開催することになりました。今度の会場は、調布駅前のジョナサンです。皆さん、雨後の青葉のように溌溂とし、会は大盛況で、近くの隠れ家的名店での3次会へ突入しました。

2次会、3次会と先生方も大挙参加してくれました。この先生たちは、知識や教養がとても豊富です。日頃から書くこと・学ぶことが習慣化して、勉強を勉強と捉えていない人たちなのです。しかも、どんな話題でも気難しさの全くない語り口でした。

そうして、あっという間に夕空は夜空となり、一同は清々しく解散していきました。本日も夏らしい夏です。

 

夏の公開講座2009年の講義は、このルポに登場していないオフレコの話も多かったです。裏技的な作劇方法、デビューへの近道となる情報など、たっぷり吸収しました。あとは、私たちの腕の見せ所です。チャンスは一瞬で逃げていくので、皆さん、熱い内に鉄を打っていくようです。

 

今後も夏の公開講座は、話題の脚本家、監督、プロデューサーなど気鋭のクリエイターが登壇します。事務局が実施したアンケートにも、あの人に登壇してほしいと熱烈な要望が届いているようです。夏の公開講座は生き物です。私たちのアクションから、思わぬリアクションが生まれるかもしれません。

 

この3日間で出逢った人たちは、いい意味でプレッシャーになります。しかも、ここで鍛えたシナリオ筋肉は、逆境に負けない底力となるはずです。夏の公開講座2009の参加者の中から、新しい作り手たちが活躍していくでしょう!!

 

 

及沢七木(受講生)プロフィール

 夏の公開講座、毎年受講しています! 東京都在住。大学卒業後は会社勤務と併行して、シナリオの勉強に励んでいます。

第7回函館港イルミナシオン映画祭短編シナリオ部門で最終選考。

月刊「シナリオ」誌08年2月号、5月号、10月号にて“シナリオ倶楽部新聞”執筆。

ソニーマガジンズ『ベッキー・1stフォトエッセイ べき冷蔵庫』制作スタッフ。

今までに感銘を受けた映画は『マリア・ブラウンの結婚』『カイロの紫のバラ』『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』などなど。感銘を受けたTVドラマは『きらきらひかる』『白い巨塔』などなど。