【タイトル】 

「ほくろ」

【作者】 

金子 英明(かねこひであき)

【E−mail】 

zero-one@cablenet.ne.jp

【シナリオ】

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《梗概》

埼玉県男衾駅近くに住む中学生、中岡守男は竹林で寝転んでいると、偶然性交する男女を目撃する。

女の乳房にある大きなほくろに見入っていると、女と目が合い思わず逃げる。竹林の外に出ると、左手のほくろが女のほくろとそっくりなことに気付き、おののくのであった。

 

 28歳になった中岡は、新米のメッキ工として東京・板橋で働いていた。

 蒸し風呂のような作業場での重労働と冷徹な上司、町田貴司からの厳しい扱いに耐える日々。ある日、作業場で脱水症状と薬品中毒により、中岡は倒れる。体調が回復した中岡にメッキ工の厳しさを語り、転職を勧める町田。

 だが中岡は意地になり仕事を続ける。ひたむきな姿勢の中岡を、町田はいつしか認め始める。

 

中岡は入社して数ヶ月経った台風の夜、町田の自宅に招かれる。家に上がった中岡は全裸で眠る町田の妻、弥生と出会う。何よりも驚いたのは、弥生の胸の大きなほくろだった。中岡の脳裏をよぎる少年時代の竹林での記憶。

 

 弥生は長年調理師として働き洋食屋を開くのを夢見ていたが、半年前に資金を持ち逃げされて以来、労働意欲をなくしていた。今は街で知り合ったイラストレーター志望の冬木こるりという少女と遊んで暇をつぶすだけの無為な毎日。

 町田の家を訪ねるようになった中岡は、おおらかだが翳のある弥生に惹かれていった。何度か会ううちに理性を抑えきれず関係を持つ二人…。

 

 弥生との密会に溺れる中岡であったが、町田へのうしろめたさを覚えずにはいられなかった。一方町田も弥生に男の影を感じ、不信を募らせていく。

 中岡のアパートで逢瀬を重ねる中岡と弥生であったが、部屋から出たところ、つけていた町田から完膚なきまで殴られたのを機に、別れを決意する。

 

 中岡と弥生が関係を持っていたことに衝撃を受けた町田は、職場でうっかりと作業ミスを起こし、火傷を負う。原因が自分にあると責任を感じた中岡は、けじめをつけて退職する。

 

 4年後、中岡はアルバイトで引越しの作業員をしていたが、奇しくも町田の家の近くで作業することになる。思い切って家を訪ね町田と再会するが、恨み辛みを散々聞かされた挙句に喧嘩別れし、町田家を後にする。

 

 引越しの現場に戻る中岡は、罵られたことによる怒り、町田からこの先も許されないというわだかまり、アルバイトでやりくりする現状に落胆しつつ、ただ淡々と働き続けるのであった。