【タイトル】 

「マイ・リトル・ラヴァー」

【作者】 

高杉 秋子(たかすぎ あきこ)

【E−mail】 

未公開

【シナリオ】

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《梗概》

 土谷将勝の家はビーグル犬のブリーダーである。父、繁の夢は、ドックショーで活躍する素晴らしい犬を作り、自分たちの犬舎を一流にする事だった。将勝もまた、父を尊敬し、将来ショーのハンドラーになりたいと思っていた。しかし、実際はなかなかいい子犬が生まれず、ショーでの成績も振るわない。生まれた犬を他人に譲り収入を得ていたが、繁は犬を大事に扱わない飼い主から強引に犬を取り返すなどし、家計は赤字続きだった。

 ある日、三匹の子犬が生まれる。ラック、リサ、ルコと名付けられた犬たちは皆、ショードックとして素晴らしい素質を持っており、一家の期待は膨らむ。ショーに出せる犬なら、ハンドラーとしてオーナーから犬の代金とは別に管理料などを受け取る事が出来る為、一家の生活も楽になるはずだった。
 だがルコは急死し、リサは生まれつき足に障害がある事が判明する。
 犬舎名に傷が付くことを恐れる繁は将勝にリサを捨てさせる。

 その後、幸子の計らいで、将勝は一匹だけ残ったラックと供にショーに参加するようになる。ショーを通じて将勝とラックの絆は強くなり、リサを捨てて落ち込んでいた将勝は次第に本来の明るさを取り戻していく。

 しかし、繁はラックのオーナーを希望した三人それぞれに偽造した血統書を渡し、毎月犬の管理費を受け取っていた。その事を知った将勝は反発するが、繁は取り合わない。母、幸子も生活の為やむを得ないと父を庇う。
 父に反感を持つ将勝はやがてショー中のトラブルで繁と対立し、二度とハンドラーをやらないと言う。

 その後ラックは繁のハンドリングで数々のショーで優秀な成績を収め、成長していった。
 オーナーの一人である藤原夫妻の娘、理香は、「ドックショーでは自分らしい犬が勝つ」と言う将勝を嫌っていた。彼女は両親の期待を一身に受け、したくもない私立中学受験をせざるを得ない自分と、ドックショーに出されているラックをダブらせていた。理香はチャンピオンになったラックを強引に引退させ、家へ連れ帰る。
 ラックと別れがたい将勝は、繁に内緒でラックのしつけを口実に、藤原家に出入りするようになる。ラックを通じて将勝と理香は次第にうち解けていく。

 ある日、理香は中学受験の悩みを将勝に打ち明ける。将勝から両親とよく話すようにとアドバイスを受けた理香はその夜、母、留美に自分の気持ちを正直に打ち明けるが、受験するよう厳しく注意され落ち込む。一方、将勝もふとした事から、藤原夫妻に今後ラックと会うことを禁じられ、ショックを受ける。
 繁の妻、幸子は藤原夫妻以外のラックのオーナーにラックは死んだと言うよう、繁から指示されるが、オーナーの一人から遺骨を引き取りたいと言い出され困る。繁に相談するがどうしようもない。たまりかねた幸子は、実家に帰ってしまう。
 帰宅後、母の家出を知った将勝は、繁の態度にウンザリし外出する。藤原家に頼み込んでラックと最後の散歩をさせてもらう。するとかつて将勝が捨てたリサと再開する。胸が一杯になる将勝、こらえていた涙があふれる。理香に電話し、「一緒に逃げよう」と言う。
 その夜、幸子の実家に来た将勝とラック、そして理香。しかしそこに繁と藤原夫妻が現われ、将勝たちは再び逃げ出す。
 後を追う繁は、車道に飛び出したラックを庇い車に轢かれ、一生車椅子での生活になる事となる。
 将勝の言葉でこれまでの事を反省した繁は見舞いに訪れた藤原夫妻と理香に事情を全て話し、謝罪すると、ラックをもう一度だけショーに出させて欲しいと頭を下げる。
 繁の事故後、自分にはこうしたいという意志が無く、ただ逃げていただけだと気付いた将勝は、何度も失敗しながらも車椅子でショーの練習を懸命に続ける繁を見て、深く考えさせられる。

 そして、日本最大のドックショー当日がやってくる。大勢の観客の前で車椅子でラックと出場する繁。歩様審査で見事なターンを決め勝ち進む。実は繁はターンの為に、以前犬を譲った丸山に特別な装置を依頼し、車椅子に取り付けてもらっていたのだった。
 しかし、途中で装置のネジが無くなってしまう。一同は必死に探すが、見つからない。次の試合の時間が迫る中、丸山と幸子が会場近くの金物屋にネジを求めて急行する。
 キング戦。幸子たちは間に合わない。繁の代わりに将勝がハンドラーを務め勝ち残る。
 後は最終戦を残すのみとなった時、幸子たちが戻ってくる。最終戦では修理を終えた車椅子で繁のターンが決まり、見事ラックが優勝する。
 表彰式の中、理香は受験についての自分の態度を考え直す。終了後、繁を取り囲んで喜ぶ一同。将勝は改めて父親のようなハンドラーを目指す決心をする。

(終)