【タイトル】 

「パウダー」

【作者】 

島田 直子(しまだ なおこ)

【E−mail】 

shimashima4.@aa.cyberhome.ne.jp

【シナリオ】

非公開

 

《梗概》

大学を卒業し、就職浪人した萩原ナナ(22)は、安いアパートを探すため乗っていた電車の中でスーダン人の親子に出会う。そして、その少女マーシーにレモンを拾ってあげ、降りたのがきっかけで荒川沿いの下町に引越しをしてくる。下町の薬局でアルバイトを始めたナナは、その町に住む労働者外国人の多さに驚く。

ある日、帰宅途中雨に降られ、ヨルダン人、アリの店(通称アラブ商店)で雨宿りをする。そこは町の日本人達は近づかず、労働者外国人のイスラム教徒(ムスリム)達が集まる店だったが、ナナはその日からしばしば店に行っては香辛料のパウダーを買い、通 うようになる。だが、買い揃えたパウダーで料理を作りアリに報告しに行くと、店に集まったムスリム達が日本と戦うアラブのサッカーチームを興奮して応援するのを目の当たりにして、店には入れず帰って行く。

ある日、ナナは好奇心からアリを東京モスクに誘う。しかしナナはそこで、コーランの響きとムスリムの男達に圧倒され倒れてしまう。宗教の違いを大きく感じたナナは、その日からアラブ商店に足が向かなくなってしまう。

電車で出会った少女マーシーは体が弱く、しばしば薬局に来るが、いつも粉薬(パウダー)のお金がないため、アリから借金したり、薬局でディスカウントしてもらったりしている。

ある深夜、アリが日本人の少年達に襲われ、店を壊され大怪我をする。アリを心配して駆けつけるナナに、仲間のムスリム達は冷たい態度を取る。数日後、ナナが荒川の土手で佇んでいると、怪我をした体で自転車に乗ろうとして転んでいるアリを見つける。歩きながら、アリは、「イラクのニュースを見る度に、今日も殺し合いか!と怒りが込み上げる」と言う。話しながら、二人が着いた古い雑居ビルは、アリが通 うモスクだった。

隅田川の花火大会の夜、ナナは、マーシー親子が花火を観覧しているのを見る。が、翌日、親子が夜逃げしたこと、不法滞在だったことを知り衝撃を受ける。マーシー親子の薬代を立て替ええていたアリのことを思い出していると、テレビからイラクが爆撃されているニュースが流れてくる。ナナは、「今日も殺し合いか!と怒りが込み上げる」と言ったアリの言葉を思い出す。夕方、アリの店へ行くナナ。ムスリム達はナナに冷たい視線を向ける。ナナは、小皿にのった黒いパウダーを欲しいというが、アリはだめだと言う。それはアリの髭だった。アリは笑い、「ナナは友達だ」と言う。ナナは、アリにアラビア語でさようならと言い、店にいた男達一人一人にも、それぞれの国の言葉でさようならと言う。男達はしばらくあっけにとられるが、やがて皆が笑い出し、ナナの顔にも微笑みが浮かぶ。