【タイトル】 

「目覚めれば、愛」

【作者】 

梅実 真弥(うめざね まみ)

【E−mail】 

mami-ra@aioros.ocn.ne.jp

【シナリオ】

非公開

 

《梗概》

 「愛される」ことに馴れて「愛する」ことを知らないヒロインが、一人の男を好きになり、いったんは自己愛の泥沼にはまりながらも、「愛する」ことに目覚めていくまでの軌跡。

 景観プランナーの片桐千代香は、美貌と才能に恵まれ、プライドが高く、社交的性格の現代風キャリア女。回りの男達は千代香に憧れながらも、一方で引け目を感じ、対等に向き合えない。人形創作師の優次もそんな一人で、恋人とは言えない曖昧な関係。姉の美代子が結婚と離婚を繰り返していることもあり、千代香は結婚にも懐疑的で、誰かを本気で愛することもないまま、潜在的な孤独を抱えて生きている。

 キャリアのわりに仕事に恵まれず、人生に疲れていた千代香だが、霊園のプランで、業界の大御所である建築家の滝川勉に抜擢され、大きく飛躍する。人形にしか心を開かない優次とは違い、64歳の滝川は自らに厳しく、独自の哲学と信念の中で生きており、千代香の乾いた淋しさをよく見抜く。自分を丸ごとぶつけ、自分の弱さを預けられる相手に初めて出逢った千代香は、滝川を依存的に愛し始める。

 仕事でも脚光を浴び、滝川との愛に満たされ、束の間の幸せに浸る千代香だったが、やがて二人の仲がスキャンダルになる。あくまで「滝川を愛していない」と周囲にうそぶく千代香。思い余った姉の美代子は、滝川の妻・弥生に会いに行き、滝川に無償の愛を注ぐ弥生に触れ、心を打たれる。 五年前に心臓の手術をしている滝川は自分の余命を常に意識しており、自分亡き後の千代香を気遣い、これまでの仕事や自叙伝の整理を手伝わせ、千代香に後事を託そうとする。自分との愛に溺れるなと諭す滝川。千代香は、滝川のいない未来など思いもよらず、一緒に死ぬ ことを考えるが、滝川に拒まれ、自分の感情を持て余すようになる。滝川が計画していたホスピスの建設を、勝手にウェディング・チャペルのプランに変えてしまう千代香。

 やがて千代香は、子供を産みたいと強く望むようになるが、実子のない滝川は、妻の弥生への気遣いもあって取り合わない。どうしても滝川の命を繋いでいきたい千代香は、一人で勝手に画策して妊娠に成功する。姉の美代子から千代香の妊娠を知らされた滝川は、心を動かされるものの、表立っては喜べない。滝川は、弥生とタイへ行った帰り、遠回しに弥生に千代香のことを頼む。
 やがて滝川は、千代香が無理やり押し進めたチャペルの工事の途中で事故に遭い、子供の顔を見ることもなく、帰らぬ 人となる。

 滝川の墓前で初めて、滝川の妻・弥生と出会う千代香。子供が産めない体だった弥生は、千代香の妊娠に傷つきながらも、あえて千代香を受け入れようとするが、千代香は心を開かない。やがて無事に男の子・悟を産んだ千代香だったが、一年後、自分の不注意で悟を失明させてしまい、子供に滝川の建築を見せたいという希望も叶わなくなってしまう。
 滝川の三回忌の日、千代香は墓前で弥生と再会する。癌に冒され余命半年の弥生は、自分はホスピスに移り、滝川家の財産と家を悟に譲りたいと提案する。滝川への究極の愛に生きる弥生に、千代香は初めて自分の未熟な愛を恥じる。
 「生きていくって、罪滅ぼしですね」と呟く千代香に、「あの人は恩返しという言葉が好きだったわ」と優しく答える弥生。千代香は滝川の家で、悟とともに弥生を見送ろうと決心し、三人で束の間の生活に安らぐ中、季節が過ぎてゆく。