シナリオ講座      一般社団法人シナリオ作家協会


     
  雪室俊一 (シナリオ作家)

1941年生まれ。神奈川県出身。

【TV】
「サザエさん」「ワンダーベビルくん」「ホイッスル!」「あずきちゃん」
「ポコニャン!」「平成イヌ物語バウ」「クッキングパパ」
「キャンディ・キャンディ」「もーれつア太郎」「オバタリアン」
「ピーターパンの冒険」「は〜いステップジュン」
「とんがり帽子のメモル」「子鹿物語」「Dr.スランプ アラレちゃん」
「おはよう!スパンク」「野球狂の詩」「若草のシャルロット」
「フランダースの犬」「魔女っ子メグちゃん」「ゲゲゲの鬼太郎」
「あしたのジョー」他多数 
【映画】
「カッパの三平」「あいつとの冒険」 他多数


                            


2010年5月24日(月曜日)

日記を書くのは小学生のときの夏休みの絵日記以来である。
じつは10数年前に某通販会社で「10年連用日記」というのを買ったことがある。
この会社は、B級有名人を広告塔にして、摩訶不思議なものを売りつける会社で、ぼくもずいぶんだまされた。最大の被害は空気清浄機。フィルターは台所にあるキッチンペーパー。ファンも使用していないので騒音はゼロという触れ込みの製品で、宣伝の片棒を担いだのは、ヘビースモーカーの少女マンガ家。仕事部屋においたら、たちまちタバコの匂いが消えたという。
いいことづくめの製品は、他の通販会社も扱い、ついには家電量販店に並ぶまで成長した。
ところが、公的機関がテストした結果、まったく効果がないことが判明。あっという間に製品は市場から姿を消した。
こういう場合、ちゃんとした企業なら詫び状を出すなり、代金を返すなり、対策を取るものだが、この会社は知らん顔。それでも懲りないぼくは、次々と怪しい商品に手を出した。
売り方のうまさは、寅さん並みで、気がついたときは買っているというありさま。
傑作は某コピーライターが開発したレトルトカレー。地方都市で、たまたま入った小さな食堂のカレーがあまりにうまいので、レトルト化して売り出したというのだから、飛びつかない手はない。
早速、買って試食したところ、そのまずさに卒倒しそうになった。カレー好きのわが娘も一口食べて吐き出す始末。当然、購入者の苦情が殺到して、あっというまに姿を消した。
さて、そんな会社の日記帳だが、届いてみると、ごく普通の品でインチキではなさそうだ。
年が明けたら書こうとしまい込んだので運の尽き。どこへしまったか忘れてしまったのだ。見つかったときは、1月中旬、いまさら書き始める気にもなれず、そのうち、どこかへ消えてしまった。

そんなだらしない男のぐうたら日記。一週間、お付き合いのほど。(誤字脱字ご容赦)

【プロフィール】
現役最長老(?)のアニメライター。
現在、長寿アニメ「サザエさん」を執筆中。著書に「テクマクマヤコン」(バジリコ刊)など




2010年5月25日(火曜日)

午後、クルマのセールスマンU氏来訪。20代のイケメンで独身。ぼくと正反対の誠実な青年である。
用件は新型車の売り込み。わが愛車も今年で三回目の車検。車齢7年で一台のクルマをこんなに長く乗ったことはない。U氏からは一台も買ったことがない。日頃、こまやかなサービスしてもらっていることだし、買ってもいいかなと家人に相談したところ「乗らないクルマをなんで買うの」と突き放された。悔しいが正論である。
以前はクルマか酒かというと、ためらいもなくクルマを選んだ。ところが最近は、ためらいもなく酒を選んでしまう。その結果、わが家のクルマはホコリをかぶっている始末。走行距離も少なく、まだまだ充分乗れる。持ち主はくたびれているが、クルマは元気で無理に買う必要はないのだ。
しかし、ここで一台買ってU氏を男にしてやりたいという気持ちもある。そんなぼくに家人は冷たくいい放った。「赤の他人を男にする前に、自分が男になりなさい」
これも正論である。ぼくがいちばん嫌いなのはエラそうな顔をして正論を吐く輩である。

【プロフィール】
昨日、現役最長老のアニメライターと書きましたが、間違いでした。正確にはナンバー3でした。現在「サザエさん」を執筆中。他に「あずきちゃん」「キテレツ大百科」「キャンディキャンディ」など。



2010年5月26日(水曜日)

8月下旬放送の「サザエさん・夏休みスペシャル」のシナリオ脱稿。ペラで170枚。1時間の超大作である。
ドラマを書いている人から見たら、1時間で超大作?と思われるだろうが、アニメ番組の大半は30分もの。
レギュラーで書いている「サザエさん」に至っては一本が10分(正味7分)という短さ。短距離ランナーがマラソンに挑戦するようなものだが、ぼくの場合、マラソンランナーが短距離を走っていると思っているので、長いものを書くと故郷に帰ったようにホッとする。
急遽、決まった企画なので富山地方のシナハンに3日。シナリオの執筆に10日という強行スケジュールだったが、なんとか切り抜けた。怠け者ライターとしては、制約があったほうが仕事がはかどる。
いちばん困るのはテーマも自由。締切りも自由という仕事で、たぶん一生書けないだろう。



2010年5月27日(木曜日)


午後、クルマで近所のタイヤショップへ。雪道用のスタッドレスタイヤを夏用タイヤに履き替えるため。先日、取材で富山へ行ったとき、タクシーの運転手に「まだスタッドレスですか」と笑われた。雪国・富山でもとっくに夏用タイヤに替えているという。いつもは4月頃、交換するのだが、今年は一日延ばしにして、今日になってしまった。というのは、スタッドレスでも走行に支障がなかったからだ。このまま使っていれば、冬の前にまた交換の必要がないのではと、タイヤメーカーに問い合わせたところ「おススメしません」とのこと。ゴム質が違うので、これから夏に向かって使用していると安全性に問題があるらしい。
なんでも一日延ばしにする、ぐうたらな人間だが、仕事に関しては律儀そのものである。
じまんするわけじゃないが、ここ数年、締切りに遅れたことがない。遅れるどころか、締切りの数日前に脱稿していることが多い。
いつも締切りに遅れている若手ライターにじまんしたら、ニヤリとして「それって、単に暇なだけじゃないんですか」といわれた。図星である。
 ぼくの経験からいって、遅筆のせいで締切りに遅れるライターは少ない。なぜ遅れるかというと仕事を抱えこみ過ぎているからだ。需要に生産が追いつかないだけの話だ。
その点、ぼくは今後も仕事が増えそうもない。これからもきちんと締切りを守る生活が続けられそうだ。



2010年5月28日(金曜日)

昼どきを狙って、娘が遊びに来る。頭痛はどうだ?と聞くと、おかげさまですっかり治ったという。一カ月ほど前、家人と娘は原因不明の頭痛に悩まされていた。二人の頭痛をクスリも使わずに見事に治したのはぼくである。ひたすら害をまき散らしている、ぼくだが、たまには役に立つこともあるのだ。
なにを迷いごとと思われる方もいるだろうが、真実である。
離れて暮らす二人が同時に発症ときいて、ぼくはピンと来た。原因はケータイから出る電磁波である。
ケータイには家族割引という制度があり、手続きをすると同居していなくても家族間の通話は無料になる。その制度を知った娘は加入して、母親との無料通話をたのしんでいた。タダだから当然、長電話になる。ようするに脳の近くで長時間、電波を出し続けたのが原因だ。なぜ断言できるかというと、むかしアマチュア無線をやっていたとき、現在のケータイに近い周波数のハンディー無線機で長時間、交信すると頭痛や吐き気に襲われるという事例がいくつも報告された。専門誌で「電子レンジ現象」と紹介されたこともある。
ケータイの周波数は電子レンジに近い。最近、ネットでケータイでステーキが焼けたというニュースが話題になったが、理論的にはデタラメとはいえないらしい。
さて、わが家の頭痛騒ぎだが、あちこちに飛び火した。家人や娘の友人たちが「じつは私も」と頭痛を訴えていたのだ。彼女たちに共通しているのは、ケータイでの長電話。心当たりの方はケータイの長電話をしばらくやめると改善されるかもしれませんよ。



2010年5月29日(土曜日)


仕事も一段落して、のんびりくつろいでいると静岡の義妹から電話。
義母が危篤状態だという。一瞬、耳を疑う。今月の初旬に介護施設にいる義母を見舞ったときは年齢相応の衰えはあったが、元気そのものだった。ぼくの著書が三冊欲しいと頼まれていたので、持参すると大喜びだった。世話になっている介護士の人たちにあげるという。その人たちがパッとしないシナリオライターの本をもらって、喜ぶとは思えないが、義母にとってのぼくは、じまんの婿である。この春、朝日新聞に小さなインタビュー記事がカラー写真入りで出たときは、わがことのように喜んだらしい。
その義母が本の代金を払うといってきかない。この本は著者がおどろくほど売れず、もらってくれるだけでもうれしいと説明すると、そのときは笑顔でうなずくのだが、10分もすると、また本の代金の話になってしまう。
乏しい年金の中から孫や曾孫への小遣いを忘れなかった義母らしい心遣いだ。なんとかあきらめてもらい、帰ろうとすると、エレベーターまで送るといってきかない。足が不自由なのだからいいとみんなが説得すると、なんとも悲しい顔をした。
義母は若いときに夫を失い、女手ひとつで三人の子どもを育てた。それぞれの子どもたちは家庭を持ち、孫も生まれた。やっと楽が出来ると思った矢先、最愛の足取り息子をガンで奪われた。
そんな不幸にもめげず、義母は常に明るくて、好奇心にあふれていた。わが家へ来てFAXを見たときの驚きは、いまでも忘れない。電話線を伝わって書類が届くという原理がどうしても理解できないようだった。無理もない。説明するぼくもよくわかってないのだから。

不幸の塊のような義母だが、彼女は一族の不幸をすべて背負ってくれたのかもしれない。一族がそれぞれに幸せな生活を送っているのは、彼女が身代わり不動の役割を果たしてくれたからかもしれない。

クルマでかけつけようとしたが、土日は慢性渋滞の千円高速の日。ノーテンキなドライブ族だけを喜ばせる千円高速は世紀の愚策である。
その後、少し持ち直したという連絡があり、家人が新幹線で向かった。ぼくはクルマでスタンバイ状態である。

そんなわけでリレー日記は、明日の分は書けそうもない。奇蹟が起こらない限り。

【プロフィール】
職歴40数年のアニメライター。現在は「サザエさん」を執筆中。
文中の売れなかった本は「テクマクマヤコン」(バジリコ刊)お金が余ってる人は買ってください。



2010年5月30日(日曜日)

都合により本日の日記はお休みさせて頂きます。

管理人・梶原


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