シナリオ講座      一般社団法人シナリオ作家協会


     
    安田真奈 (シナリオ作家)

  奈良県出身、大阪在住。神戸大学映画サークルにて自主映画
  製作を開始。
  約10年間メーカー勤務の後、2002年秋より監督・脚本業に専念。

  ■映画 
  「幸福(しあわせ)のスイッチ」監督・脚本担当
  ※第16回日本映画批評家大賞/特別女性監督賞・主演男優賞
  (沢田研二)受賞。
  ※第2回おおさかシネマフェスティバル/脚本賞・助演女優賞
  (本上まなみ)受賞。
  「猫目小僧」脚本担当
  ■TV 
  NHK「中学生日記」脚本担当
  テレビ東京「リトルホスピタル(美少女日記3内ミニドラマ)」
  監督・脚本担当
  関西テレビ「オーライ」「ひとしずくの魔法」監督・脚本担当


                            


2009年2月23日(月曜日)

はじめまして。関西組トップバッターとしてブログを担当させていただきます、安田真奈と申します。
約10年のメーカー勤務を経て、監督・脚本家として活動しております。2006年に劇場映画「幸福(しあわせ)のスイッチ」(上野樹里さん、沢田研二さん出演)の監督・脚本を担当しましたが、撮影後懐妊し、現在育児中のため、なかなか撮影現場に復帰できずにおります。
どうぞよろしくお願い致します。

■午前 息子を連れて友人宅へ
私を含めて三組の親子が集合。子どもの年齢は皆2歳。
「魔の2歳児」と言われる通り、皆それぞれにかんしゃくが激しく、大変である。
一人の女の子は、特に気性が激しい。私も息子のかんしゃくには相当手を焼いているが、そんな私から見ても「こりゃ大変だな」と思うほど。
しかしその子の母親は、「上の子は、オモチャをとられたらすぐにシクシク泣いてしまうような、自己主張できない、内にこもりがちな子だった。それを考えたらこの子は、よその子よりちょっと激しいけど、自己主張できるから安心。」とのこと。
なるほど、ものは考えようだ。

■午後 家事や息子の世話をしながら、メールチェックや資料整理など。
現在、長編映画脚本2本(漫画原作一本と、小説原作一本。私は監督担当ではない)を執筆中だが、いずれも映画化実現はまだ遠く、すなわちまとまった収入のめども遠い。
流れたらどないしょ……と、不安がよぎる。
漫画原作の方は2006年から書き始めて改稿を重ねているが、諸事情で企画が中断するなど、難産気味。昨日、原作漫画のファンであり、かつ主人公の設定に近い女性にヒアリングをしたので、それをどういう形で反映できるか、考えてみる。
彼女と数回、メールのやりとり。今までヒアリングした方々とは違った視点の意見も出してくれたので、有り難い。
原作ものを脚本化する場合、いかに原作のテイストや核の部分を失わずに、長編ドラマとして組み直すかが、難しい。今回の原作漫画は非常に淡々としており、そこが魅力でもあるのだが、手を加えないと、二時間の映画として成立しづらいと思う。プロデューサーも同意見。
そういえば、映画「猫目小僧」(原作は楳図かずおさん)の脚本を書いた時も、原作が1話独立のオムニバスだったので、オリジナルストーリーをたてた。「キモかわ系B級ホラー」だったのでなかなか楽しい作業だったが、今回は悩んでばかりである。
息子が昼寝したので、よっしゃ改稿や!とパソコンを開いたが、1時間もしないうちに起きて「ギャー泣き・頭突き・車のオモチャなど堅いもので強打」などと、あの手この手で「俺の相手をしろ!」と抗議してきた。パソコンも壊されそうな勢いのかんしゃくに、根負け。
子どもが起きている限り、仕事にならない……。



2009年2月24日(火曜日)

■ 午前
息子が起きてからだと仕事にならないので、5時に起床、脚本の改稿をする。
睡魔に襲われ、画面いっぱいに「ん」の字を並べてしまう(キー押しっぱなし!)。
あまりはかどらなかった。

10時半から昼迄、昨日とは別の友人宅へ。集まった親子は4組。
冬期や雨の日は、子どもを外で遊ばせにくいので、お互い家に招待しあったり、「つどいの広場」という乳幼児用のフリースペースに行ったりしている。
終日家の中だと、子どものかんしゃくがひどくなりがちで、親も疲労困憊してしまうので、皆、協力しあって外に出る機会を作っている。子どもを産んでから、地元の友人(いわゆるママ友)がかなり増えた。

友人いわく、一人目の出産時も、二人目の出産時も、大量出血して大変だったので、もう一人生むのが怖いとのこと。私の時は、お産の途中で息子が心拍低下に陥り、緊急帝王切開となった。陣痛に苦しみながらも、機械から聞こえる息子の心拍が、通常の130くらいから半分の60台に落ちているのがわかった。生命の危険を感じ、ぞっとした。
お産の話になると、どの母親からも、ドラマ顔負けの恐怖体験やビックリ体験が飛び出す。
医療が進歩したとはいえ、やはり出産は母子の生死と隣り合わせ。
時々、街ゆく人々を見ながら、この人々すべてが幾多の困難を乗り越えてこの世に生を受けたのだと思い、ちょっと感動する。

■ 午後
息子に邪魔されながら、明日のトークの仕事の準備。
イマジカウエストで撮影監督協会の懇話会があり、そこで一時間半ほど話をさせていただく予定。資料を準備したり、話す項目を整理したり。
若い学生さんが多く来るので、会社員時代にどう時間を捻出して映画を製作したか(基本的には睡眠を削るしかない……)、どういう経緯で劇場デビュー(「幸福(しあわせ)のスイッチ」監督脚本)にこぎつけたか、ということを軸に話してくださいと言われている。
よく、こういう主旨で講義を頼まれることがある。
「異業種会社員あがりの新人監督・脚本家」という中途半端な経歴が、若い方々の「俺にもできそう!」的発奮につながるとよいのだが。
息子が寝ついてからは、改稿に着手。とにかく書き進める。



2009年2月25日(水曜日)

■ 午前
昨晩から今朝にかけて、息子が夜泣きで三回起きた。三回とも延々と泣き、抱っこなどで対応しつづけたので、疲れた。1歳10ヶ月まで、毎晩4?5回、夜泣き対応に手こずるという生活が続き、すっかり睡眠障害&育児ウツ寸前だった。最近は少しマシだが、昨晩のように何度も長く泣かれるとしんどい。
なんだかんだと家事をしている間に午前が終わる。

■ 午後
息子が風邪気味なので、外出を控え、家で過ごす。
今週末、和歌山県の橋本フィルムコミッション設立記念映画祭があり、トークに行く。
息子が昼寝したので、トークに関連した作品のDVDをチェックしておく(見終わらないうちに起きたが)。
「幸福のスイッチ」を28日13時頃から上映していただけるとのこと。映画館上映(54館)終了後も、イベントで上映いただく機会が多い。30件近くあるのでは。
「家族」「仕事」といった普遍的なテーマなので、イベントや映画祭に招待しやすいようだ。
映画は一度作ると何度でも楽しめる、「終わらないお祭り」である。

夕方から、イマジカウエストにて、撮影監督協会の懇話会。毎月、作品鑑賞会やゲストによる講演をされている。
拙作映像をまじえながら90分、学生時代・会社員時代をへて現在に至るまでの映画製作・脚本執筆についてお話させていただく。女性監督の話は珍しいらしく、ベテランカメラマンの方々から映像系学校の学生さんまで、広い年齢層で、47人の方が参加くださった。
「幸福のスイッチ」の企画をいろんなプロデューサーにもちこんだが、「電器屋の家族ものなんて地味だから客がこない」と断られ、取材と改稿を重ねて三年がかりでなんとか映画化実現にこぎつけた……という、汗と涙の苦労話(!!)がウケたようで、終了後の懇親会で多くの方に「よく頑張った!」とねぎらわれる。
今日は実母が奈良から息子に会いにきてくれたので、留守中の子守りをお願いできて助かった(私の家は大阪)。
シッターさんを発注すると、一時間1800円前後……た、高い……。
保育園の一時託児は1時間800円だが、託児可能な日が少ないし、夜間は無理。
保育園入所を昨年9月から申し込んでいるのだが、待機児童が多すぎて、4月入所も無理とのこと。いつになったらちゃんと仕事できるのだろう?
ただいま夜の三時、ようやく改稿に着手……30分くらいで寝てしまいそうです。



2009年2月26日(木曜日)


■午前
近くのマンションの集会室で子どもを遊ばせる会が月2回ある。
行く気満々だったが、息子が風邪をひいたようなので中止。
抱っこだと眠るが、おろすと起きて泣くので、とにかく休ませるために、ずっと抱っこ。疲れる。
寝たのでパソコンを開いて(抱っこのまま…)、改稿。マンガ原作の映画脚本。中盤がうまく書けず、停滞している。

■午後
引き続き、息子の看病をしながら、脚本を見直す。
よく昼寝する子ども、一人遊びが上手な子どもの場合は、母親もある程度用事をこなせるらしいが、息子のように後追い・かんしゃくが激しいと、新聞すらまともに読めない。
号泣を放置したいが、ご近所迷惑となる。
しかも先日39度の熱を出して以来、赤ちゃんがえりというのか、甘え癖がすごい。
そういえば友人二人も、子どもが風邪をひいて以来、甘えと後追いがしばらくすごかったと言っていた。なるほど、これか……。一日が、自分のペースで運べないのが辛いところ。
いまひとつ原稿の改善策が見えないので、息子がとろとろと眠っている間に(おろすと起きるので抱っこのまま…腕がしびれる!)関連資料を読みなおしたりする。

夕方、息子が元気になり、ほっとする。今度は、暴れるように遊びはじめた。
ちょっと元気になると、すぐに激しく走り回って、またぐったり、という定番パターン……。
あんさん、ええかげんに学習しなはれ……。



2009年2月27日(金曜日)

■午前
自宅で息子の世話をしながら、雑用を片付ける。
息子はすっかり元気。
走って、笑って、疲れて、泣いて、走って、笑って、疲れて、泣いて、の繰り返し。
資料の整理などをしているうちに昼。

■午後
息子が1時間半ほど昼寝してくれたので、短い原稿仕事をする。
東京新聞芸能面のコラム「言いたい放談」を隔週で担当しているので、次回のネタを下書き。
二年間担当したが、あと二回で終了だ。
以前、演技についての講義ネタを書いたところ、ウケが良かった。
二人の人間が、別れを惜しむシーンのシナリオを用意する。互いに世話になった礼をいい、一人があるものを記念に渡す、受け取った方は驚いて感激する……という流れ。ほんの数分の短いシナリオだ。
演じる役者にだけ、こっそり人物設定を告げる。用意した人物設定は10パターンほど。「実家の母と、都会に戻っていく娘」「転勤する社員と、良きライバルだった同僚」「偶然再会した、中学時代の親友同士」「密かに交際していた、男子高校生と教育実習生」などなど。
シナリオはごく単純なセリフで構成されているので、どの人物設定でも演技可能だ。記念に渡すものは、演じる二人で相談して考えてもらう。
ひととおり演じた後、見学者に、どういう人物設定だったか当ててもらう。
父親を演じたつもりが兄にしか見えないと評されたり、恋人を演じたはずが友達に見えたと評されたり、理想の演技と現実の演技のギャップは、役者自身が考えるより大きい。
撮影現場では、脇役やエキストラ出演の場合、簡単な設定だけ説明されて、「しばらく会話しといてください」と頼まれることも多いので、こうしたワークをしてみた。
ネタに困って独自に考えたワークだが、もしかしてすでにメジャーなやり方なのかも??
ライター志望の方の中には、監督志望の方もおられるはず。
なかなか面白いので、役者さんの稽古のネタに、是非やってみてください。

夜、主人が珍しく早く帰ったので、息子を託して、自転車で5分のシネコンにレイトショーを見に行く。「ベンジャミンバトン」。先日みた「チェンジリング」が非常に良かったので、物足りなく感じた。
明日は和歌山県の橋本市産業文化会館で「幸福(しあわせ)のスイッチ」を無料上映とのこと(13時)。地元の皆さんに楽しんでいただけますように!



2009年2月28日(土曜日)


■午前
近隣のつどいの広場が催してくれた「ひな祭りイベント」に息子と参加。
つどいの広場とは、全国にある親子用(乳幼児)フリースペース。乳児は授乳やおむつ替えの問題があるため外出しづらいが、このような、立ち寄りやすく気軽に情報交換できる場があることで、密室育児や母親の孤立、育児にまつわる悩みの解消に結びつく。
別の育児サークルもそうなのだが、0〜2歳では男の子が7、8割を占める。男の子は赤ちゃんの頃から、家の中で大人しく遊んではくれないようだ。DNA恐るべし。

■午後
主人は休みだが用事で終日留守なので、平日と同じく、息子の世話をしながら仕事関係の雑用。
息子は午前中走り回ったから絶対昼寝するはず、昼寝したら原稿を書こう……と企んでいたが、なんと結局本日は昼寝なし。
最近、体力がついてきたのか、昼寝をしない日が週2、3日ある。
万博公園を走り回らせたのに昼寝しなかった時は本当に驚いた。私だけがへとへとになって、結局仕事にならず、なんのこっちゃとぼやいたものだ。
夜、さすがに早く寝てくれたので、改稿。少々煮詰まり気味。



2009年3月1日(日曜日)

■終日、和歌山県橋本市のフィルムコミッション設立記念イベント。
パソコンを持参し、往復の特急電車内で原稿の下書きなどをする。
上映作品を鑑賞し、トークイベントに参加。「赤い文化住宅の初子」主演の東亜優さんが橋本市出身とのことで、一緒にトーク。なかなか魅力的な若手女優さんだった。

「幸福(しあわせ)のスイッチ」でお世話になった田辺市のフィルムコミッションメンバーもトークのために来られた。
「幸福(しあわせ)のスイッチ」をきっかけに、田辺では弁慶映画祭という映画祭が始まった。コンペ部門を設けたり、コンペの審査員に映画検定一級合格者の方々を起用するなど、年々面白くなりつつある。
かつて私が言った「映画は終わらないお祭り」というフレーズが、田辺のフィルコミメンバーの間でなにやら合い言葉のようになっていた。「監督!田辺はまだまだ映画のお祭りやでぇ!」などと、頼もしい言葉がぽんぽん飛び出す。
終了後は和歌山市内に移動して食事。懐かしく楽しいメンバーとの語らいに、心和んだ。

■一週間のブログを振り返ると、育児ばかりであまり仕事ができていない。
託児やベビーシッターをしばしば発注できるほど稼げていればよいのだが……、非常に苦しい時期である。
ただ、いずれ子どもネタのオリジナルシナリオを書いて監督したいと構想中なので、毎日がネタ拾い状態だ。
育児サークルやつどいの広場などには、ネタ拾いもかねて、積極的に参加している。
パソコンを常に持ち歩いているので、カバンはリュックサック。
ショルダーバッグにパソコンを入れると、息子にブラーン、ガツーン、とぶつけそうなので、リュックにしている。
ベビーカーに乗せている間に昼寝してくれたら、即、喫茶店に入り、パソコンを広げる。
子どもの言動など、ネタになりそうなことは、絵日記的にノートにつけたり、wordで書き留めたり。
早くこの蓄積を、作品として実らせたいものである。

今日のブログで担当終了です。
一週間、お読みいただきありがとうございました。
まだまだ冷え込む夜も続きます、皆様どうぞご自愛くださいませ。


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