2009年8月31日(月曜日)
雨のなか、渋谷のヒューマントラストシネマ文化村通りで『童貞放浪記』を観る。
童貞喪失の場面、挿入前は元気なのに、いざ挿入しようとするとやわらかくなってしまって、
目的を果たせないまま捨てられるコンドームばかりが増えていく。
帰り道、びしょ濡れになりながら、俺もあんな感じだったなあと、ちょっと切なくなる。
家に帰って、今週末提出予定のピンク映画のシナリオを書く。
大箱を作って、小箱にしていく。
途中、行き詰って、なんかないかと荒川洋治の「ラブシーンの言葉」を読む。
柴田みひろの短編小説「カサブランカ」のなかにある性愛の詩を紹介していた。
<僕の顔をまたぎ腰を揺らす
彼女の肛門は無臭だった
ヴァギナに指を入れると眉間に皺を寄せる
彼女の肛門は無臭だった
僕の手を取り自分の乳房に押しつける
彼女の肛門は無臭だった>
なんだかとってもいい感じ。好きだな。少し元気になる。
荒川洋冶も書いていたが、「彼女の肛門は無臭だった」のリフレインが印象的で、思わず微笑んでしまう。
お尻の穴にはユーモアがある。ヴァギナは時々怒りそうで、ちょっと怖い。
生殖の重荷を負わされた生真面目なヴァギナよりも、お尻の穴のほうに無限の可能性があると言ってたのは足穂だったっけ。
どうせ書くなら、お尻の穴みたいなシナリオを書いていきたい。ま、腕がないので難しいのだけれど。
一週間、よろしくです。
2009年9月1日(火曜日)
お金がないのでバイトをする。
9時から17時まで、コンクリート検査会社での肉体労働。新しい仕事を頼まれたので、普段の倍疲れる。
バイト終わって、家に帰って速攻でシャワーを浴び、作協事務局へ行き、ICレコーダーとデジカメを借りる。明日、映画『アマルフィ 女神の報酬』の「脚本」クレジット未表示問題で、フジテレビのプロデューサーに話を聞くため。次号の作協ニュースに掲載する予定です。
19時から乃木坂のCOREDOシアターで、映芸シネマテーク「インディペンデントシネマの変遷を見る」と題した上映会で、井土紀州監督『百年の絶唱』と今泉力哉監督『微温』を観る。『百年の絶唱』は前から見ようと思っていて見逃していた作品。
井土さんは、暗黒の二十代とどこかでおっしゃっていたが、その「しんどさ」がスクリーンから伝わってくる。完全には理解できなくても、監督の思いが伝わるのは観ていて気持ちがいい。力をもらう。
飲みには参加せず、12時ちょっと前に帰宅して、明日の『アマルフィ』問題の準備をする。質問事項をまとめたり、レコーダーのチェックをしたり。終わって、執筆中のピンク映画の小箱作りをするが、たいしてはかどらない。
眠くなったので寝る。
2009年9月2日(水曜日)
14時、恵比寿のウェスティンホテル東京内の「ザ・バー」で、フジテレビの石原隆氏、臼井裕詞氏と会う。
荒井晴彦さん、到着後、『アマルフィ 女神の報酬』の「脚本」クレジット未表示について話を聞く。
詳細は次号の作協ニュースに掲載しますので、ぜひお読みください。
15時半、荒井さんと恵比寿駅で別れ、レコーダーとデジカメを返す為、作協事務局に行く。
事務局の小沼さんと次号の打ち合わせをして帰宅。途中、西岡琢也さんから電話。本日の取材内容について少し話す。
帰宅後、先週の日記を書いた五藤利弘さんから貰ったお米とお袋が家庭菜園で作って、送ってくれたナスとピーマンとゴーヤを炒めて、夕食を摂る。五藤さんとは同郷。ご実家でお米を作っているそうだ。三か月分ぐらいは貰った。生かされているなあと感謝すると同時に、自分のふがいなさに泣きたくなる。お米、おいしゅうございました。
21時、西岡さんから事前にいただいていた『アマルフィ』の質問事項に対する、石原氏と臼井氏の回答を纏めて、西岡さんにファックスする。
23時、執筆中のピンク映画のホンを書き出すが、友人からの電話で中断。離婚すると聞いていたが、やめたとのこと。別居しているとは言っていたが、子供ができてしまったのだそうだ。結婚して十数年、頑張っても子供はできなかったのに。
友人とは大学時代からの付き合い。実家がお寺の彼は、来年あたり住職になるらしい。奥さんはコロンビアから出稼ぎに来ていた元ストリップ嬢。二人はストリップ劇場で出会った。その時、俺も一緒に見ていた。25、6才頃のお話。当時、彼は京都のお寺に修行に行っていて、夏休み期間中、こっちに帰ってきて、二人でストリップを見に行ったのだ。修行に戻っても彼女のことが忘れられない友人は、俺に彼女を追いかけてくれと頼んだ。ストリップ嬢は十日ごとに劇場を移動するので、次の劇場が
分からなければ、もう彼女に会えないからだ。まだ携帯もない時代。しょうがないので、俺は彼が辞書を引き引き書いたスペイン語のラブレターを持って、劇場へ足を運んだ。途中、花束も買ってってくれと言うので、買ってやった。ストリップ小屋の個室に彼女を呼んで、ラブレターと花束を渡し、次の劇場がどこか聞いた。宇都宮、水戸、西川口、蕨の劇場と友人のラブレターを持って、彼女に会いに行った。そのうち、俺は彼女に惚れてしまって・・・となれば、ドラマになるのだが、そんなことはなかった。単なるラブレターの配達人でしかなかった。だからいいホンが書けないんだな、きっと。で、最終的には沖縄の劇場に行くと言うので、俺はもう無理と友人に話すと、友人は修行寺を飛び出し、沖縄に飛んだ。そこから数年間、友人は新聞配達などをしながら、彼女と一緒に暮らしていた。30才を過ぎて、親と和解し、結婚を認めてもらうと、再び、修行に戻って、住職になる資格を取った。で、平穏に暮らしているのかなあと思ったら、冒頭の離婚話だった。ま、婚姻届の証人にもなったし、俺が友人をストリップに誘ったみたいなとこもあったから、別れないなら別れないでいいんじゃないかなと思う。お幸せに。俺の幸せはいつ来るのだろう。そんな日は来ないよ。
2009年9月3日(木曜日)
やっぱりお金がないのでバイトをする。9時から17時まで、コンクリート検査会社で。
バイト終わって、TSUTAYAの暖簾を潜る。現在執筆中のピンク映画を監督する人のAVを観る為。監督は十数年前にピンク映画を一本撮っているが、その後はAV監督になって、現在までに100本以上撮っているそうだ。緊縛モノを得意としているらしいので、SMコーナーで探すが見つからなかった。このまま何も借りずに帰るのもなんなので、隣のアブノーマルコーナーからニューハーフモノを借りる。ニューハーフモノは以前から気にはなっていた。ちなみにここで言うニューハーフとは豊胸して、おちんちんがついている人のことを言う。おちんちんをとった人はこの手のビデオにはいない。外見が女と同じなら女そのもののAVを見ればいいだけなのだから。つまり、おちんちんはついているが、それ以外の外見は女に見えるという人たち。ここ一、二年、ニューハーフモノは棚のスペースを確実に大きくしている。それだけ需要が増えているということだ。セクシャリティの多様化と言えば聞こえはいいが、これはそんなことではまったくないと思う。生身の女体から遠ざかり、妄想と自己愛だけが肥大化している男が増えているからだと思う。要はオタクなのだ。
家に帰って、早速、観る。
勃つだろうなとは思っていたが、予想以上に勃つので、驚く。
自分も妄想と自己愛が肥大化しただけのオタクだったのだ。すっかり忘れてた。
いつか多和田葉子の「犬婿入り」を映画にしてみたい。
男と女、人間と動物、理性と狂気、そんな二項対立が無意味になっていく世界を描きたい。
二項対立がなければドラマにならないだろうと言うかもしれないが、それでも面白くなるホンを書きたい。
それにはまだまだ修行が足りない。
2009年9月4日(金曜日)
本日もバイト。9時から17時まで。
帰宅して、コインランドリーへ行き、溜まっていた衣類を洗濯。
洗濯が終わるまでの間、近くのスーパーへ行き、カレーの具材と煙草を1カートン買う。
19時、洗濯物を干し終えると、圧力鍋でカレーを作る。これで三日間は食える。
21時、執筆中のピンク映画の小箱をさらに細かく書いていく。
3時、小箱完成。明日からシナリオに取り掛かる。土日と家に篭って書く予定。だいたいいつも集中して書くときは、執筆以外は何もしなくていいように、前日にカレーを作り、外に出なくてもいいように、煙草を1カートン買う。
たかがピンク映画に何をそんなに時間を掛けているんだと思われるかもしれないが、僕にとってはされどピンクなのだ。
僕のデビューはゲイのピンク映画『黒と黒』だった。シナリオ講座修了後、荒井晴彦さんの周りをうろちょろしていたら、たまたま飲み屋で隣に座ったピンク映画を書いている脚本家が声を掛けてくれて、デビューできた。本当に運だけだった。それがちょうど30歳。シナリオ講座の受講は27、8歳だったから、2、3年でデビューしたことになる。
講座が終わって、しばらくは卒業生と勉強会をしていたが、それも段々と人が減っていった。結局、その勉強会に最終的に残ったのは男三人だけ。そのうちの一人が僕で、もう一人は今、広報委員を一緒にやっている佐藤稔さん。もう一人も今年、エッチ系のビデオでデビューした。とにかく続けていれば、仕事の1、2本はできると思う。ただそれがいいのかどうかは分からない。続けることで失うことも多いと思うから。
講座生に偉そうに言える立場ではないけど、脚本家になるには、ある種の覚悟といい加減さを両方持ち合わせていたほうがいいと思う。
2009年9月5日(土曜日)
一日、家に居る。
しかし、筆は進まない。どうにも乗れない。まずい。これは非常にまずい。
腹は減ってないのに、カレーライスばかり食べる。逃避である。
DVDで、ジェームズグレイ監督『アンダーカヴァー』を観る。ブロンディの「ハートオブグラス」が流れるなか、ホアキン・フェニックスとエヴァ・メンデスが抱き合う冒頭の場面で痺れる。犬みたいに舌をペロペロしながらキスするのがいい。この監督、『リトルオデッサ』も『裏切り者』もよかった。1969年生まれ。俺の一つ下。うーむ。だけどもう気にしない。
80年代の音楽がたくさん流れる。80年代はMTVが全盛の頃、毎週、欠かさず「ベストヒットUSA」を見てた。プリテンダーズのクリッシーハインドが俺のアイドルだった。部屋にポスターを貼って、彼女の髪型を真似て、長髪にしたりしてた。
とにかく彼女はかっこいい女だったのだ。
彼女と薬師丸ひろ子が俺の二大アイドル。
2009年9月6日(日曜日)
一日、家に居る。
何も言うまい。飯が三合減ったということでお察しください。
ピンク映画は先細りの感があるが、エロスがなくなることはあり得ない。セックスを突き詰めることは人間を突き詰めること。セックスを描くことで、人間が見えてくると思う。僕はそのことをシナリオ講座の講師だった荒井晴彦さん、桂千穂さんから学んだ。
下ネタばかりになってしまいましたが、まあ、欠落が過剰を生むということで、お許しください。