シナリオ講座      一般社団法人シナリオ作家協会


     
    輿水泰弘 (シナリオ作家)

  1960年生まれ。埼玉県出身。
  ■テレビ
  『恋も2度目なら』 『お熱いのがお好き?』 『恋のバカンス』(日テレ)
  『料理少年Kタロー』 『名古屋仏壇物語』(NHK)
  『菊次郎とさき』 『相棒シリーズ』(テレ朝)など。
  ■舞台 
  『Wブッキング』 『小鹿物語』
  ■映画
  『旭山動物園物語〜ペンギンが空をとぶ〜』


                            


2009年10月19日(月曜日)

はじめまして。輿水と申します。
今日から一週間、お付き合い願います。
よろしくどうぞ。

でも日記かぁ……ふぅ。

日記なんて生まれてこのかた書いたことないもんで。

やっぱ断れば良かったなぁ……。

 

ま、気を取り直して。

じつはプロットを仕上げねばならんのです、明日中に。
しかし現段階で、まだ一行も書いてなくて。
この調子だと、また〆切を延ばしてもらうことになりそうで。トホホ。
せめて関係各位に、この場を借りてお詫びします。
「毎度毎度すみませんっ!」

じつはプロットを書かなきゃと思いながら、
午後、借りていたDVDを観てしまったのです。
今日が返却日でした。なのに、まだ二本も残っていたから。
僕はだいたい一度に六、七本を一週間の期間で借ります。
一日に一本ずつ観れば余裕を持って返却できる計算なのですが、
どうも計算通りに事が運ばず。たいがい返却日に
慌ただしく〈まとめ観〉するということになります。
諦めて観ないで返却する、或いは潔く延滞するという方法もあるのですが、
どちらも〈もったいない〉が先に立ち、僅かな金銭を惜しむあまりに
無理してでも観てから返却するという悪循環を続けているのです。
で。
今回無理して観たのは『フロスト×ニクソン』と、
『ワイヤー・イン・ザ・ブラッド』のファーストシーズン第三作目でした。
『ワイヤー・〜』は英国のテレビドラマなのですが、
大好きなんです、英国のテレビドラマ。特に事件もの。
日本のテレビドラマじゃ到底真似できないエゲツなさが。
せっかくだからお奨めの英国ドラマを紹介して、
強引に本日の日記のまとめにさせていただきます。

『第一容疑者』シリーズ。
これはおそらく万人が楽しめると思います。
『心理探偵フィッツ』シリーズ。
多少好みが別れるかもしれませんが、僕はシビレました。
『フロスト警部』シリーズ。
噛めば噛むほど味が出るモジュラータイプの英国ミステリです。
『バーナビー警部』シリーズ。
古き良き英国の本格ミステリ風味漂うドラマです。
『MI−5』シリーズ。
いわゆるスパイものですが、俄然〈痛み〉を感じる内容です。
『S.A.S.英国特殊部隊』シリーズ。
これはセカンドシーズンまでは文句なく面白いです。

あと番外で
『エキストラ』シリーズ。
コメディですが、いろんな意味でぶっ飛んでます。
これもおそらく日本じゃ真似できないでしょう。



2009年10月20日(火曜日)

午前八時起床。
起きて、まずミネラルウォーターをごくごく飲む。
これをすると便通すこぶる良し。
これだけは欠かさぬ日課。
だから手の届くところに、いつもミネラルウォーターのボトルあり。
冷やしてない方がごくごくいけるので常温のまま。

午前八時半仕事開始!
しようと思ったが気が乗らず。筆ピクリとも動かず。嗚呼。
アッというまに正午。
朝昼兼用の食事。
納豆は毎日欠かさない。
なぜならば、

好きだから!

午後一時。
マジ仕事せんとヤバイので、パソコンに向かう。
と、昨日返却に行ったついでに、また借りてきたDVDが気になってしまう。
いつものように六本を一週間で借りた。
「もう返却日に慌ただしく何本も観るのは嫌だっ!」
そう思った途端、せめて一本だけでもただちに観ておかねばと
強迫観念にかられてしまい、そのままパソコンでDVD鑑賞。
『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』。
ローリング・ストーンズのコンサートの模様をマーティン・スコセッシが撮ったものだ。

もう二十年以上も前、ローリング・ストーンズの東京ドーム公演に行ったことを思い出す。
とはいうものの、特にローリング・ストーンズのファンだったわけではなく、
みんなが行くというからついてっただけ。ただのミーハー。
じつは僕、若い頃はロックよりもフォーク派で(当時、ロックをやるやつは不良でした)、 『吉田拓郎』から入り、『かぐや姫』を経て、最終的には『アリス』が好きだった。
アリスといえば現在、復活コンサートの全国ツアー真っ最中。
僕は既に、よこすか芸術劇場と大宮ソニックシティで観てきたが、11月には武道館でも観る予定だ。
復活といえば今年、『やしきたかじん』も歌手として復活した。
十年前、五十歳を期に歌手活動を終わらせたたかじんだったが、
還暦を迎えた今年、なにを思ったか、コンサートツアーをやると宣言したのだ。
なので、このあいだ東京厚生年金会館に観に行ってきた。
唯一といっていいヒット曲が『東京』なのに、東京方面にはあまり馴染みのないたかじんだが、会場は満員だった。しかしロビーを飛び交う関西弁。そう!
東京在住の関西人が大挙して押しかけていたのだ。
恐るべし関西人! 恐るべしたかじん!
ちなみに、たかじんのコンサートは歌が少ない。
二曲歌って十五分から長いと三十分近く喋り、また二曲挟んで喋り、またまた二曲挟んで喋り、結局、終わってみれば歌がメインか喋りがメインか判らない。
これと似ているのが『松山千春』で、彼のコンサートも喋りの間に歌を挟んでいる感じだ。
興味深いのは、たかじんと千春が仲良しなこと……ま、いいか、どうでも、そんなことは。
ただ、これだけは是非云っておきたい。たかじんも千春も
『松田聖子』のコンサートより確実に十曲は曲数が少ないのだ。

 

ここまで書いて、ふと恐怖にかられた。……こんな益体もないことばかり書いてていいのだろうか?

いいのだ。
もし駄目だと云うなら、僕を日記に引っ張り出した人のせいだ。
僕はなるべく他人のせいにすることにしている。
その方が精神衛生上、良いからだ。

 

なんだかんだで午後六時半。
懸案のプロット遅々として進まず、今日はもう諦めた。
明日にしよう。明日だ。明日こそ、何かが降りてくる気がする。
プロットが奇跡的な仕上がりを遂げる気がする。
こう思うと、気が楽になるから不思議だ。
気が楽になったついでに一杯飲みに行こう。
飲むと、もっと気が楽になることを、僕は体験的に知っているのだ。

というわけで、本日はここまで。
御免!



2009年10月21日(水曜日)

晴。

 

結局、何も降りてこなかった。

 

降りてはこなかったが、
なんとか無理やり少しだけプロットを書き進めた。

夕方。
南田洋子さんの訃報を聞く。
南田さんとは面識はないが、
ご主人の長門裕之さんとは、
いろいろ仕事をご一緒させていただいているので、
やはりショックだった。
記者会見での長門さんの悲痛な言葉が、
胸に突き刺さった。

南田洋子さんのご冥福を心よりお祈り申しあげます。



2009年10月22日(木曜日)


昨日の日記の送付が午前零時をちょっと回ってしまい、
日付が今日になってしまっている。

今日の日記は、当然、今日の日付なので、
これじゃまるで今日、二日ぶん書いたみたいになっちゃってる。

なんて不細工な日記だろう。

僕はやはり日記には向かない体質なのだ。きっと。……

 

気を取りなおして。

 

今日は、プロットを書き進めなきゃいけないのに、
昼間、芝居を観てきた。
仕方がない。
今日がこんな状況だなんて、
チケットを取った時には予想してなかったんだから。
なにしろチケットを取ったのは数ヶ月前である。
芝居のチケットを取るのは、たいがいそんなもんである。
その時には、今日は一日フリータ〜イム!と思ってチケットを確保したのに、
実際今日になってみると、ちっともフリータ〜イム!じゃなかったわけだ。

で。

『組曲虐殺』
本日の芝居の演目である。
物騒なタイトルだが、井上ひさしの新作。つまり喜劇だ。
昨今、『蟹工船』などで俄かに注目を浴びているプロレタリア作家・小林多喜二を描いた、井上ひさしお得意の評伝劇である。
もちろん音楽劇だ。
警視庁築地警察署で拷問の末、虐殺された多喜二。
そんな多喜二の短い人生の悲惨な悲劇を、喜劇に仕立て上げようというのだから、
井上ひさしには畏れ入る。

さて肝心の芝居の出来だが、
相変わらずの井上節で大いに楽しんだ。
けど、傑作というわけではない。
同じ評伝劇なら樋口一葉の『頭痛肩こり樋口一葉』とか
宮澤賢治の『イーハトーボの劇列車』とか
林芙美子の『太鼓たたいて笛ふいて』の方が良く出来ていたと思う。
評伝劇以外にも『きらめく星座』とか『マンザナ、わが町』とか『父と暮らせば』とか
傑作の多い井上ひさしにしてみれば、今回の新作は一般的な出来だと思う。
(井上ひさしの場合、一般的でも相当レベルが高いが……)。

そう、なにを隠そう僕は井上ひさしの芝居が好きなのだ。
旧作が『こまつ座』で上演される時には、なるべく行くようにしている。
新作も、もちろん時間が許す限り。
今年は新作の『ムサシ』も観た。
遅筆で有名な井上ひさしだが、
この『ムサシ』は公演初日の二日前(正確には一日半前)に、
最終場の原稿が上がったそうである。
稽古初日には当然のごとく一幕しか原稿が届かず、
あとは稽古中に、日々、数ページずつ原稿が届くという状況だったらしい。
むろんそんな真似は、ある種の天才作家にしか許されないワザだろうが、
そこまで原稿を粘れる体質には、やはり畏れ入ってしまう。


あ〜あ。
畏れ入ってばかりじゃ始まらないけど。
僕のような凡庸な作家は、せめて〆切ぐらい守らなきゃね。
改めて、そう思った。

さ、頑張ってプロット書くぞ!



2009年10月23日(金曜日)

終日、プロット。

こうなると、日記に書くようなことは何もない。


……。


よって本日の日記は、これにて終了。
御免!



2009年10月24日(土曜日)


落語が好きだ。

高校生の頃から、なぜか落語に興味を持っていた。
『子ほめ』なんかを覚えては、
同級生の前で演ってみせたりしていた。

でも本格的に好きになったのは大学生になってからである。
大学進学と同時に、僕は大阪(大学の寮)に住むようになったのだが、
同じ寮住まいの友人が笑福亭仁鶴のテープを聴かせてくれたのが、
きっかけだった。
レコードからダビングしたものだったが、
『初天神』『延陽伯』『青菜』『七度狐』の四席が入っていた。
べらぼうに面白くて、僕はそのテープを友人から半ば強奪するように借りると、
本当に毎晩、それこそテープがすり切れるほど聴いた。

そういう意味では僕の落語体験は、上方落語が出発点といえる。

仁鶴で上方落語に開眼した僕は、当然のごとく
当時、関西で人気を博していた桂枝雀にぞっこんになった。
カセットテープを買って聴き、月一で放送されてた『枝雀寄席』は欠かさず観て、
時にはホールへ独演会も聴きに行った。
もちろん枝雀以外も聴いた。
四天王の呼ばれていた松鶴、米朝、小文枝、春団治……。

そうそう、
そんな大学生活の中で、びっくり仰天する〈事件〉に見舞われたことがある。
同級生が突然、本当に突然、大学をやめて落語家になってしまったのだ。
彼は桂福団治に弟子入りし、桂小福としてデビュー。現在も
桂福楽を襲名して頑張っている。

東京へ戻ってきてからは(正確には埼玉だけど)、
上方だけでなく江戸落語も積極的に聴くようになった。
志ん生の型破りな落語も大好きだし、
円生の折り目正しい落語も素敵だし、
時には談志のエラソーな落語もいい。
(そういえば……井上ひさしの『志ん生と円生』という評伝劇があったなぁ。
もちろん観に行きました。オモロかったです)。

東京(埼玉)へ戻ってきて脚本家修業をしている時、
ふとしたきっかけで三遊亭竜楽という落語家と知り合い、
もう、かれこれ二十年近い付き合いが続いている。
当時、二つ目だった竜楽も今はもちろん真打ちで、
「師匠」と呼ばれる身になっている。
ちなみに『見習い』『前座』『二つ目』『真打ち』という階級制度のあるのは
東京の落語界だけで、上方にはない。


……なんで急に落語のことなんか書き綴ったかというと、
プロット執筆の合間の息抜きのつもりで落語(DVD)を聴き始めたら、
止まらなくなってしまったからだ。
本日、僕のプロットの邪魔をした落語家は、もちろん桂枝雀。
演目は以下のとおり。

『くしゃみ講釈』
『鷺とり』
『宿替え』
『池田の\x8F\xF4惑磴ぁ\xD9
『八五郎坊主』
『高津の富』
『住吉駕篭』
『貧乏神』



2009年10月25日(日曜日)

万年筆が好きだ。

原稿はパソコンだし、手紙などめったに書かないし、
つまり手書きの機会など昨今めったにないくせして、
でも万年筆が好きなのだ。

今、常時持ち歩いている万年筆は四本。
ペリカンが二本、モンブランが一本、パーカーが一本というラインナップである。

ペリカンは二本とも『トレド』というやつで、
胴軸に象眼装飾の施されたものだが、
一本は『1931トレド』というペリカン社が1931年に発売した製品の
限定復刻版である。
で、もう一本は通称『ビッグトレド』というやつ。現行品より一世代前のものだ。

モンブランの一本は『146』。
太軸で有名な『149』よりも、ひとまわり小さいサイズの万年筆だが、
僕の『146』は現行品ではなく、
五十年代製造の、いわゆるヴィンテージ万年筆である。

パーカーの一本もヴィンテージ(二十年代製造)で、
通称『ビッグレッド』という朱色の万年筆。
正式名称は『デュオフォールド』という。デュオフォールドのレッドだ。

なんだかんだで万年筆を集めていたら、六十本近くになってしまった。
コレクションのつもりはなく、すべて実用のつもりなのだが、
常時六十本も使い切れるわけはなく、大部分はケースの中で眠っている状態だ。
今後、とっかえひっかえ使っていくしかないだろう。

ちなみに現行品の万年筆は、総じてニブ(ペン先)が硬い。
ボールペンの出現で、我々の筆圧は昔より相当上がっているから、
それに合わせて各社の万年筆のニブも硬くなったそうだ。
明治期、夏目漱石も使っていたとして有名な『オノト』など
使ってみると、驚くほどニブが柔らかい。
筆圧のかけ方次第で、まるで筆のような抑揚が文字に出る。
もし『オノト』に出逢う機会があったら、ぜひ試してみるといい。

……。

結局、最後の最後まで益体もないことを書いてしまった。
ホント、申し訳ありませんでした。
本日をもって僕の日記は終了です。

一週間のお付き合い、ありがとうございました!

 

え?


懸案のプロットはどうなったかって?


そりゃ訊くだけ野暮ってもんですぜ。ひひひ。


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