シナリオ講座      一般社団法人シナリオ作家協会


     
   藤田伸三 (シナリオ作家)

1967年生まれ。広島修道大学人文学部卒。
当シナリオ講座の18期研修科を修了。
当時の専任講師は脚本家の柏原寛司氏。

■TV
「それいけ!アンパンマン」「トレジャーガウスト」
「ぷるるんっ!しずくちゃん」「ToHeart2 トゥハート2」
「アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル」
「NINKU-忍空-」「ポケットモンスター」シリーズ
「こみっくパーティー」「とっとこハム太郎」「マスターキートン」他
■映画
「劇場版甲虫王者ムシキング グレイテストチャンピオンへの道」他


                            


2008年7月14日(月曜日)

午前中、「それいけ!アンパンマン」のシナリオを一本書き上げる。ペラ44枚。初稿なので若干枚数が多くなった。
先週、カープ対ドラゴンズ戦を観るために帰省していたので、上がりがずいぶん遅れてしまった。これ以上延ばすとヤバそうだったので、ひとまずデッチ上げた。

藤田伸三です。アニメ界では5本の指に入るライターです。
「原稿の上がりの遅さでは5本の指」なのか、「つまらないホンを書くライターとしては5本の指」なのか、「おバカなキャラクターしか描けないことでは5本の指」なのか、そこらへんは僕にもよくわかりません。
お中元もお歳暮も一度も届けたことがなかったせいで、こんなガラにもない場所に引っ張り出されてしまいました。やっぱりつけ届けは大切です。

午後、シナリオ作家協会の理事会に出席する。
作協は今、シビアな問題をいくつも抱えてるんだけど、理事会では実に真摯に対応している……と、僕なんかが言うのは相当おこがましいが、ホンと、そう感じてる。
理事会のやりとりは結構面白いので、理事以外の方(特に新入会員)にも傍聴してもらったら、作協への関心も高まるんじゃないかなー、などと無責任に考えてみたり。

理事会終了後、神保町へ。
シリーズ構成を担当している「デュエル・マスターズ クロス」の打合せ。
TVアニメの打合せは、ライター個別に時間を指定して行われることが多い(歯医者の予約制のような感じ)。だから同じ作品を書いてるライターでも、一度も顔を合わさないまま番組が終了した、なんてこともよくある。
「デュエル〜」はそれとは違って、ライター全員(といっても、僕を含めて三人)が揃って打合せに同席する、というスタイルだ。
今日は特に揉めることもなく、18時半に終了する。その後ライター三人と、7月から新たにこの番組の担当になったテレビ東京のプロデューサーを交えて、居酒屋で飲む。
番組の打合せ後に飲むのは、今年は実はこれが初めてだ。アニメライターは複数の番組抱えてて忙しい人が多く(そうしないと食っていけないし)、スケジュールを合わせるのは案外難しいのだ。

あーだこーだと、くだらないことを喋って散開、帰宅。
僕は朝型のライターなので、今日はちょいと疲れた。この日記を書いて、さらにドッと疲れた。



2008年7月15日(火曜日)

昨日打合せをした「デュエル〜」を午前中に直し、同じく「デュエル〜」の次の話(途中まで書いていた)の作業を再開する。
夕方から「アンパンマン」の打合せ。
今日はホンの内容よりも、ゲストキャラクターの設定とシリーズを通しての約束事の確認や再検討、それと雑談にかなりの時間を費やした。

「アンパンマン」は20年以上続いている長期シリーズで、僕も6年目あたりから関わっているけど、最近は内容的にはおとなしくなっている……洗練され、まとまってはいるものの、あまりメチャクチャができない状況になっているのだ。
まァ、原因はいろいろあるし、ライターひとりでどうこうできる問題でもないけど、最低限、自分(たち)で枷を作って自分(たち)の首を絞めるようなマネだけはしたくないなー、とは思っている。

帰宅したらベイスターズ対カープ戦はすでに8回ウラで、梅津が投げていた。
梅津は好きなピッチャーだ。去年の交流戦だったか、打たれて降板した後、ベンチでタオルに顔を埋めていた姿が非常に印象に残っている。

僕のプロフィール欄の画像は、先週広島の新球場の工事現場を見学した際に撮ったマンホールの蓋です。自分の写真は載せたくなかったので、担当の久松さんに無理言ってこれにしてもらいました。ありがとう、久松さん。

そういえば、自宅のブルーレイレコーダーがいつのまにかダビング10対応にアップデートされていた。
DVDかブルーレイに一度ダビングしたら、ハードディスクからは自動的に消去される……って方が、僕にとっては楽だしありがたいんだけど。
ダビング10が本当に必要なユーザーってどんな人だろう? どうしてもイメージが沸かない。
ダビング1だと困る人は確かにいるかもしれないけど、せいぜいダビング3か4、5くらいでいいんじゃないのか?



2008年7月16日(水曜日)

昨日打合せをした「アンパンマン」を直し……と、昨日の日記とまったく同じ書き出しだけど、ライターの日常なんて、ま、そんなモンだ。
午後、「ポケットモンスター ダイヤモンド&パール」の打合せ。
先週末に提出していたホンがセリフひとつの直しで決定ということになり、次の話のプロット発注・受注に。
シリーズ構成の冨岡淳広さんが作成したラフなストーリー案をもとに、総監督、監督、プロデューサー諸氏と雑談に近い会話をしつつ、担当ライター(僕)がまとめていく。
「ポケモン」のホンはペラ90枚弱が必要で、30分番組としてはちょいと分量が多くて大変だ。だけど、子ども向けアニメのホン作りは駄菓子を作ってるような感じで、気楽に書けるし好きだ。(あ、「駄菓子作りが楽だ」って意味では決してないです。あの業界も大変だろうし、こっちもこっちで気楽だけどマジメには書いてるので……念のため)

帰りに新宿の紀伊國屋書店に立ち寄り、「東京裁判」(日暮吉延)、「ぼくの家はここにあった」(田邊雅章)、「キャプテン・フューチャー全集 別巻」(野田昌宏)などを買う。
「ぼくの家は〜」は、以前ドキュメンタリー番組でダイジェスト版を観て、ぜひ全長版を観たい、手に入れたいと思っていた。
「キャプテン・フューチャー〜」は作者のハミルトンではなく、先日亡くなられた野田昌宏さんが書いたオリジナル長編。

僕は野田さんの翻訳が好きで、「スターウルフ」シリーズを初めて読んだ時はエラく興奮したし、ティモシイ・ザーンの「コブラ」シリーズにもハマった。
野田さんの著作は割と集めていて、図説「ロボット」「ロケット」「異星人」は眺めているとニヤニヤしてしまうし、「宇宙ロケットの世紀」は太陽系の距離感(?)が実にわかりやすく書かれている。他にも「スペース・オペラの書き方」なんて、シナリオライター志望の方にもかなり参考になるんじゃないだろうか?
それから、10年前に野田さんが出演されたNHKの「人間大学 宇宙を空想してきた人々」は、ぜひDVD化してほしい。あれは名作だ。



2008年7月17日(木曜日)


野茂英雄が引退を表明した。
今年のピッチングを見る限り、この日がくるのは近いだろうと思ってはいた。
だけど、KK世代の元野球小僧のひとりとして、同時代を生きたプレイヤーがフィールドから去っていくのは、やはり寂しい。

レッドソックス移籍後の二度目のノーヒッターは本当にシビれた。
翌日のスポーツ紙はすべて買い、今でも保存してある。

野茂がバファローズにいた頃、東京ドームのファイターズ戦は常にスタンドがガラガラだった。内野自由席なんて、チケット屋へ行けば400〜500円くらいで投げ売りしていた。イチローがいたブルーウェーブとの対戦だって、似たようなモンだった。
コーヒー一杯程度の金額で彼らのプレイ、ゲームを観戦できたワケで、今思えば実におトクだったのだ。

野茂は以前、「日本のプロ野球を変えるには、税制を変える必要がある」といった趣旨の発言をしたと記憶している。
その発想や着眼点には驚いたし、こういったセンスの持ち主にこそ、NPBを運営する立場(例えばコミッショナー)に就いてもらいたいと感じた。彼はあるいは、かつてファイターズの球団社長になった三原脩さんを凌ぐようなアイディアマンになれるんじゃないだろうか。

NPBの新しいコミッショナーが決まったけど、親米派のこの方の就任で、MLBの日本進出が一気に加速するという噂が飛び交っている。
頓挫したかに見えた2004年のあの一リーグ化構想は、実は今も密かに進行中なのだという。
もしもそれが実現すれば、資金力に乏しい地方のチームが真っ先に潰れるだろう。
そのあたり、野茂はどんな考えを持っているのだろうか。ぜひ聞いてみたい。

野茂がメッツに移籍した頃、ドジャースタジアムを訪ねたことがある。
緑の天然芝が美しい、いいフィールドだった。



2008年7月18日(金曜日)

僕がデビューした頃の話だ。
あるTVアニメのシリーズ構成をやっていた先輩から、「アニメのライターは42歳くらいが曲がり角だからな」と言われた。
何でも40を過ぎると、各方面からお声のかかる人とかからない人(つまり、仕事のある人とない人)の差がハッキリしてくるのだという。
「へぇ〜、そんなモンか」と、その時は特に何も感じなかった……というより、「僕はどうせ3年くらいで潰れるだろうから、全然関係ないモンね(42でライターやってるハズないモンね)」と、思っていた。
その後、その先輩は映画シナリオを書き、連ドラを書き、小説を書いて、今はアニメからは足を洗っている(と思う、たぶん)。

月日は流れた。
僕は今もTVアニメのライターをやっている。
来年、42になる。
TVアニメにライターひとり分の空席ができる日も、そう遠くはないかもしれない。だけど、現役のアニメのライターはみんな忙しい。
シナリオ講座の受講生のみなさん、それから受講しようかどうしようかとお考えのあなた、まさしくチャンス到来です。

今日は午前中、「アンパンマン」のアイディアを作成した。
「アンパンマン」はとっくの昔に原作のストックは切れていて、TVシリーズに関しては、キャラクターもストーリーもそのほとんどがライターの創作だ。アイディア(といってもメモ程度だけど)を練るこの作業が、「アンパンマン」では一番楽しい。
その後、「デュエル〜」のホンを直す。恐らくこれにて決定稿。

午後、中途半端に時間が空いたので、おととい買った「東京裁判」を読み始める。
夕方、「アンパンマン」の打合せ。
打合せの終了後、子どもの通っている幼稚園へ行く。夏休み前の行事に参加(見学)して、夜帰宅する。



2008年7月19日(土曜日)


月曜日の朝に初稿を上げた「アンパンマン」のホンを直す。第三稿。
たぶんこれで決定になると思う。
その後、「デュエル〜」の来年一月以降の構成案を練る。
「デュエル〜」はTVアニメとしては、制作スケジュールにあまり余裕がない。
シリーズ構成を担当していると、そのへんは非常に気にかかる。
ホン作りはじっくりやりたいけど、絵コンテや作画(CGだけど)といった現場作業にもなるべく時間を割きたいからだ。

午後、買いっぱなしだったDVDを開封し、観る。
「怪猫 呪いの沼」と「宇宙快速船」。
DVDもブルーレイも書籍もそうだけど、気になったタイトルはなるべく買っておこうと考えているので、未開封・未読のものがどんどん増えていく。
怪談映画は夏しか観る気が起きないので、「呪いの沼」なんて購入してから一年が経ってしまった。同じ石川義寛監督の化け猫モノとしては、新東宝時代の「怪猫 お玉が池」の方が好きだ。
「宇宙快速船」はずいぶん前にも観てるけど、印象はその時と変わらなかった。

カープが連敗している。
先週のゲームを観ていて、たぶんこうなるだろうと予測はしていた。
五月の三週間弱のロードと七月の二週間のロードが今シーズンのヤマ場になるに違いないと、春先から思っていた。
さらに先週、絶好調のチーム状態で絶不調のドラゴンズと対戦し、三戦目で競り負けた(0−7から追いついたにもかかわらず、勝ち越せなかった)時点で、「来週(つまり今週)は連敗するに違いない」と読んだ。
見事に当たってしまった。
実は今シーズン、僕が球場で観戦したゲームは勝率10割だ。
栗原はすべてのゲームで打点を挙げてるし、チーム防御率だって1点台だ。
明日、もしかしたら神宮球場に行くかもしれない。



2008年7月20日(日曜日)

シナリオ講座には、基礎科と研修科で一年間通った。
今の赤坂のシナリオ会館ではなく、高田馬場のYMCAに教室があった頃の話だ。

基礎科の講師は石松愛弘さん、研修科は石松さん、神波史男さん、柏原寛司さんで、大変お世話になった。講師のみなさんと受講生の仲間(気がおけない人たちばかりで、雰囲気は実によかった)には、とても感謝している。
感謝してはいるのだが、その気持ちを言葉や態度やつけ届けで表現できないのが、僕の悪いところだ。だからこンなところへ引っ張り出されたりする。

僕は講座に一年間通ったけど、結局シナリオは一本も書けなかった。
そンな奴でもどーにか仕事ができ、何とか食えてるンだから、この業界は結構いいかげんなモンだ。

さて、このブログを読んでくださってるみなさんに朗報です。
明日からのリレー日記は、伴一彦さんが担当されます。
僕が講座の受講生だった頃、伴さんはTVドラマ界のトップを走っていたライターで、シナリオ作家志望の者にとっては憧れの的でした。そして現在も、トップの座を譲ることなく疾走されています。
浮き沈みの激しいテレビの世界において(あ、伴さんは映画シナリオも書かれていますけど)、まさに驚異的な方なのです。
理事会や著作権部会などでお見かけする度に、僕はいつも「おお、伴さんだ!」と呟いたりしています。
この一週間とは打って変わって、タメになるお話がたくさん出てくることでしょう。


リレー日記TOP