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――どのようなきっかけで脚本家を目指されたのでしょうか。

もともと役者になりたくて、高校で演劇部に入りました。たいていの高校は既成の台本を使って演じるんですけど、部の顧問から「お前書いてみろ」と言われて、それが初めて書いた台本です。大学で演劇部に入ってからも、自分で書いて自分で演じて、というのをやっていました。1つ上の先輩に(俳優の)鈴木亮平くんがいたんですが、彼はずっと役者を目指していて、その頑張りを見ていると「役者ってすごいしんどいな」と……。自分は書くのも楽しかったし、言葉は悪いんですが、その時は「書く方がラクかな」と思って脚本家を目指すことにしました(笑)。


――シナリオ講座に通われたのはおいくつの時ですか?

25歳位じゃないかな。僕は『世にも奇妙な物語』でドラマデビューしたんですけど、(自分でテレビ局に)持ち込みをした企画が通って、ドラマデビューが決まった頃だったと思います。


――既にシナリオを沢山書かれ、デビューが決まっていた時に、シナリオ学校に通おうと思われたのはなぜですか?

ずっと独学で書いていたので、いまいち書き方が解ってなかったというのと、あと大きかったのは、本当のプロの脚本家がどう考え、どう仕事をしているのかを知りたかったということ。あとは、「創作論講義」を受けたかったんです。「コネが出来る!」と思って。


――実際に、創作論講義での出会いがその後のお仕事に発展したことは?

あります。講義に来る監督やプロデューサーにほぼ毎回、自分の書いたものを「読んでください」と渡していました。もちろん向こうからの連絡はなかなか来ないですが、NHKエンタープライズの吉岡(和彦)さんという方が連絡をくださって、他の作品も読んでもらったら、面白がってくれて。そこから1年位、二人で企画会議のようなことをして、ラジオドラマで1本お仕事をさせていただきました。


――創作論講義に来校した講師で、印象に残っているのは誰ですか?

林誠人さんです。「構成」についての講義で、どんなジャンルの作品も、構成は5つの要素で出来ているというお話だったんですけど、それよりも一番印象に残っているのは、「脚本は儲かる」という言葉です(笑)。それまで、「脚本は儲からない」という話をよく耳にしていたのですが、「しんどいこともあるけど、その分だけ夢がある」と言ってくれて。だから今、自分も人に訊かれたら、頑張れば頑張った分だけ得られるものがある仕事だと答えていますね。


――山岡さんが受講された際の専任講師は、井上正子氏、藤岡美暢氏、真辺克彦氏だったと伺っています。先生方から言われて心に残っている言葉はありますか?


真辺先生から言われて印象に残っているのは、「君の話は、面白いけど、まだまだ机上で書いた話や」という言葉です。言われた時はピンと来なかったんですけど、仕事をするようになって、この数年でやっと身に染みて解るようになりました。未だに自分のクセというか、頭で考えただけの話になりがちなので、当時からそこを見てくれていたんだな、と。真辺先生は授業後もよく飲みに連れて行ってくださいましたね。

藤岡先生に言われて印象に残っているのは、「シナリオが一番上手くなる方法は、“仕事で”書くことだ」という言葉です。自分はデビューがわりと早く決まって、そこからは現場で仕事をする中で学んできたので、藤岡先生の仰っていたことを今とても実感しています。

井上先生は常々、「シナリオには自分の思想が表れる」「シナリオは神社と同じだ」と仰っていました。神社で一番重要なご神体は、本殿の奥の奥に納められていて外からは全然見えない。シナリオにおける“テーマ”も同じで、色々な装飾を施された作品の中に、一番重要なもの(テーマ)が内包されている、それをどう見せるのかを考えるのがシナリオだ、と。

プロになって本数を重ねるうちに色んな壁にぶつかって、なんとなくですけど、先生方に言われた言葉を自分の中で解釈できるようになってきた感じです。「ああ、すごく大事なことを言ってくれていたんだな」と解って、シナリオ講座に通ってよかったなと本当に思います。


――3名の先生方それぞれに指摘やアドバイスが違っていて戸惑うことはありませんでしたか?

それはなかったですね。仰っている“枝葉”の部分は先生方によってもちろん違いはありますが、大事な“根幹”の部分は皆さん共通していたように思います。


――今後、手掛けてみたいジャンルや題材はありますか?

今すごく興味があるのはラブコメです。(――今春公開の映画『ピーチガール』はラブコメですよね。) そうですね。自分はもともと「劣等感」や「コンプレックス」といった負の感情を書きたいと思っているのですが、『ピーチガール』もコンプレックスの話です。日焼けのせいでギャルに見られてしまい、周囲から敬遠されるというコンプレックスを抱えながらも、「憧れの人に絶対振り向いてもらいたい!!」と主人公がひたむきに突っ走るという……。デビュー当時は、登場人物をストーリーの為に動かすというか、いかに話を展開していくかだけを考えて書いていたところがあって、色んな人から「人間の感情が分かっていない」「感情が繋がっていない」と指摘されました。今作で初めて挑戦したラブコメって、人が恋をして、悶々として……という感情をどう描き出せるかが肝で、それを考えているうちに「感情」がいかに大事かということが改めて解ってきました。「感情」が「理性」を超える瞬間って、「殺人か恋愛か」しかない気がしていて、その瞬間を書くのがすごく面白いな、と。


―― 一番好きな脚本家は誰ですか?

一番というと難しいですけど、『マルコヴィッチの穴』や『エターナル・サンシャイン』のチャーリー・カウフマンさんも好きですし、ビリー・ワイルダーさんも好きです。でも、一番好きなドラマは野島伸司さんの『美しい人』('99、TBS)です。古今東西のドラマの中で一番好きですね。繊細な心の描き方とダイナミックな展開の中に、魅力的な台詞がいっぱいあって……めちゃくちゃ面白いんですよ。


――シナリオ講座の後輩たちへアドバイスをお願いします。

やっぱり、書くことが全てだと思います。講釈を垂れているだけでやらない人って結構いますよね。もちろん、名作を観て分析するのは大事なのですが、それだけでは理解できないことが沢山ある。自分で実際に書いてみて初めて、分析したことの意味が解ると思います。「頭の中の名作より、実際に書いた駄作のほうが優れている」という(劇画原作者・小池一夫氏の)言葉があって、その通りだと思います。シナリオって、書けば書くほど絶対に上手くなる。書いた数だけちゃんと上達するので、うだうだと言う前に書くべきです。
(――チャンスを掴むには?) 僕はあんまり根性論が好きじゃないんですけど、でもやっぱり根性ですよね(笑)。「脚本家になれたらいいな」では遅いです。「絶対になる」という意識を持っていれば、勉強も全く苦じゃないし、(プロになるために自分から)持ち込みをしたりすると思うんです。臆せずにどんどんチャレンジしてほしいですね。


 

プロフィール 
1983年生まれ。兵庫県出身。04年、東京外国語大学外国語学部フランス語専攻在学中に、ラジオドラマ「道草『葛西ジェッター・ノボール』」で脚本デビュー。シナリオ講座第48期研修科を受講後、08年に「世にも奇妙な物語 『さっきよりもいい人』」でドラマ脚本デビュー。以来、コメディ、ミステリー、学園ものなど幅広いジャンルで活躍中。




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